水と油

 反発し合って仲が良くないことを「水と油」の関係に例える。日本と中国の間柄も近年、そんな感じに映る。同じアジアの隣国同士なのに、どうもしっくりいかない。食文化の違いが、それを暗示しているのだろうか▼食の歴史に詳しい歴史学者・宮崎正勝さんによると、中国料理のベースは「油」なのに対し、日本は「水」だったという。欧州から日本に揚げ物が伝わったのは16世紀。安価な菜種油が普及するのは江戸期になってからだそうだ▼考えてみれば、日本文化と切り離せない漢字や仏教、儒教は中国から伝わった。毎日使う箸もルーツは中国で、厩戸王(うまやどのおう)との併記が話題になった聖徳太子の時代に伝わり、宮中に広まったとされる。『魏志倭人伝』が正しければ、その頃までは手食だったようだ▼しかし風土などの違いからその後、食文化は分かれ、箸の形状にも違いが出る。大皿から取り分ける国と、それぞれに用意する「銘銘膳」では使いやすい箸の長さは違うし、肉食ではなく魚菜が中心だったことで、箸先も細く削られたらしい▼箸の置き方も、今となっては象徴的だ。横に並べる日本に対し、中国はナイフを置く時のように箸先を中央に向けて縦に置く。元は中国も横だったが、騎馬遊牧民が進出した時代を契機に、縦に変わったという▼たかが食習慣だが、その違いが余計な誤解を生む場合もある。水と油をなじませるには、サラダドレッシングをよく振ってから使うように、頻繁な意思疎通を図るしかないのかもしれない。(己)

2017年4月25日 無断転載禁止