北朝鮮情勢/制御不能の事態回避を

 核・ミサイル開発を続ける北朝鮮とトランプ米政権との対立が深刻さを増している。互いに軍事力を誇示しながら連日のように警告と非難の応酬を続け、偶発的な衝突の危険性も高まっている。緊張の長期化は関係国に負担を強いるだけで得策ではない。情勢が制御不能となることを避けるための外交努力がこれまで以上に求められる。

 軍事行動を含む「全ての選択肢」がテーブルの上にあると強調する米国に対抗し、北朝鮮は米国だけでなく、日本や韓国、さらにはオーストラリアまでも「打撃対象だ」と反発のボルテージを上げている。失敗したものの4月に入り弾道ミサイルの発射を2回試みている。

 さらに北朝鮮は、米国から影響力行使を求められている中国に対しても、制裁を強化するなら「破局的結果も覚悟すべきだ」と暗に警告した。米中が手を組んで自分たちを統制しようとするのではないかという警戒感もうかがえる。

 こうした北朝鮮の過激ともいえる一連の言動は、トランプ政権が策定中の対北朝鮮政策を探ろうとする思惑もあろう。しかし、核・ミサイル開発の継続は、国連安全保障理事会の決議に違反する。対話による解決努力への挑戦であり、自らをさらに窮地に追い込むということを北朝鮮は認識すべきだ。

 トランプ大統領は24日、安倍晋三首相、中国の習近平国家主席と相次いで電話で会談した。安倍首相とは、核実験を強行する可能性のある北朝鮮に強く自制を求めることで一致した。習主席は関係国に自制を促し、対話局面への転換が必要との立場をあらためて表明した。

 トランプ大統領と日中両首脳との電話会談は、4月に入り安倍首相とは3回目、習主席とは2回目と異例のペースで行われている。原子力空母カール・ビンソンを日本海水域に北上させ、軍事力行使もいとわない構えを示すことへの理解を求めた可能性もあるが、武力行使は外交の敗北でもある。

 米国の軍事的圧力に対し、北朝鮮は「あらゆる形態の戦争に対応する準備ができている」と刺激的な演説や声明などを連発している。しかし、こうした北朝鮮特有のレトリックに惑わされず、対話による緊張緩和を模索する努力を放棄すべきではない。

 何よりも朝鮮戦争は1953年から休戦状態にあることをあらためて確認する必要がある。相手が発するメッセージを読み違えて、再び戦火を交える危険性はいくらでもある。

 核兵器を保有し、日本も射程に置くさまざまなタイプの中距離弾道ミサイルを実戦配備している北朝鮮の軍事的脅威は64年前の比ではない。在日米軍基地も攻撃対象だとする北朝鮮による反撃の矛先が日本に向けられる悪夢のシナリオは、単なる脅しではなくなっている現実がある。

 日米とも北朝鮮の最大の貿易相手国である中国に、影響力行使を促している。しかし日本人拉致問題で非公式な対話ルートがある日本も、トランプ大統領が発信するメッセージを読み誤らないよう北朝鮮に伝え説得する役割を果たすべきだ。それが今後、地域安保で日本の存在感を示すことにもつながる。

2017年4月25日 無断転載禁止