対極の街に活性化のヒント

 渋谷のスクランブル交差点を初めて渡ったのは、友人を訪ねて上京した大学生の時だった。生まれ育った雲南市掛合町の人口は当時約4千人。ピーク時にその8割と同じ数の人が1分足らずで往来すると聞き、スケールの大きさに衝撃を受けた▼約1400万人が暮らし、政治、経済、文化の発信地になる東京。人口が少ない都道府県2トップを走る山陰と対極の場所でこの春始まった生活は、戸惑いの連続だ。すし詰めの満員電車、飛び交う多言語、情報量の多さに息つく暇はないが、生活環境や交通など利便性が高いのは確かで、一極集中するのも納得できる▼3月まで勤務した島根県西部で、集落維持や学校統廃合、担い手不足の郷土芸能など人口減と少子高齢化による地域衰退の現場に直面した。「記者さん、何か良い手はないもんかい」。問い掛けられるものの妙案が返せず、ふがいない思いをしたのは二度や三度ではない▼久しぶりに足を運んでみたスクランブル交差点は当時より迫力が増した。2020年の五輪開催に向け、人がさらに集中するのは間違いない▼ただ、若者の地方移住の流れは山陰にも広がりつつある。UIターン者に話を聞けば、都会を知るからこそ魅力が見える、と口をそろえる。暮らして1カ月の筆者も痛感している▼東京に向く矢印を逆転させることはできないが、双方向にする方法はあるはず。田舎者だからこそ見えるヒントがあり、それを伝える役目を果たす。慣れない人波に右往左往しながら心に決めた。(築)

2017年4月26日 無断転載禁止