カツオが気になる

 春先から初夏にかけての味覚の一つカツオが今季も不漁だという。中西部太平洋でのアジア諸国の巻き網漁の影響が指摘される。輸出用の缶詰やペットフードになるようだ。サンマ、スルメイカに続く不漁とあって価格の動向が気になる▼この時季の初鰹(はつがつお)が脚光を浴びるようになったのは江戸時代から。松尾芭蕉の門弟・宝井其角(たからいきかく)が「まな板に小判一枚初鰹」と詠んだように初物ブームの中で人気を呼び、当時の風刺本では「銭の刺し身」と例えられた▼ちなみに当時の小判1枚1両は、今の7万円程度になるらしい。輸送機関や冷蔵技術がなかった時代に相模湾(神奈川県)などから江戸に運んだというから、鮮度や味は今とは比較にならないだろうが、高値の初鰹を食すること自体が「通」や「粋」とされたそうだ▼江戸時代はマグロなど脂の多い食材は好まれず、カツオの刺し身の食べ方も『江戸料理読本』(松下幸子著)によると、魚が若い4~5月は辛子(からし)酢味噌(みそ)、脂が増える6~7月は醤油(しょうゆ)におろし大根が主流だったという▼この初鰹人気は江戸特有で、経済観念が発達した上方にはなかったというから面白い。しかも過熱したのは元禄期や、「田沼政治」と呼ばれ、重商主義つまり経済優先の雰囲気の中で料理文化が花開いた時期になる▼昨今のグルメブームもあってか、食費の割合を示すエンゲル係数が上昇しているという。経済優先の空気も強い。「食」は時代の気分を映すと理屈をこねる前に、まずはカツオのたたきで一杯だ。(己)

2017年5月1日 無断転載禁止