山陰の暫定2車線問題 海外編 スウェーデン(1) ワイヤロープ付き「2+1」

「2+1」で整備されたE4号線。中央にはワイヤロープ式防護柵が設けられている=3月、スウェーデン・イェブレ
はみ出し防止 劇的効果

走行性と事故抑止 両立

 高速道路の上下線を簡易ポールで区切った日本特有の「暫定2車線」(片側1車線)で、対向車線へのはみ出しによる事故が後を絶たない。山陰中央新報社は昨年、計31回にわたり、山陰両県の供用区間の約9割を占める暫定2車線の課題を検証した。事態を重くみた国土交通省は、中国横断自動車道岡山米子線で追い越し可能な付加車線の増設を決め、ワイヤロープ式防護策を中国横断自動車道広島浜田線などに設ける。悲惨な事故をなくすにはどうすべきか。独自の取り組みで成果を挙げているスウェーデン、中央分離帯を設けた片側2車線化を国策として進めた韓国の現地取材を通じ、「命を守る高速道路」の実現に向けたヒントを探った。

スウェーデンのワイヤロープ付き「2+1」
 スウェーデンの首都ストックホルムから北へ170キロ。コーヒーメーカーが立ち並ぶ地方都市イェブレを経て、港町セーデルハムンに続く高速道路・E4号線。広大な牧草地や針葉樹林帯をかき分けるように制限速度110キロで走らせると、400メートル先で片側2車線から1車線になるのを知らせる看板が目に入った。

 進むと1車線になり、間もなく2車線に戻る。一定の間隔で2車線と1車線が交互に入れ替わる。

 「1車線になっても、すぐ2車線になって追い越しができる。後ろからあおられることはまずない」。スウェーデン在住45年で、通訳兼調査員の土屋哲志さん(68)がバックミラーで後方車を確認しながらハンドルを握る。

 中央部は、鉄製ワイヤを3本張ったワイヤロープ式防護柵で仕切られており、対向車をはじき返す構造だ。


死亡者8割減少

 上下合わせて3車線で整備し、中央の車線を一定間隔で交互に追い越し車線として利用する「2+1(ツープラスワン)」と、ワイヤロープ式防護柵を組み合わせた道路はスウェーデンで生まれた。追い越し可能なスムーズな走行性と、対向車線へのはみ出し防止を両立し、コストは中央分離帯を設けた高速道路を新たに建設するのに比べ、約10分の1に削減できるという。

 スウェーデン道路交通研究所(VTI)の技術リポートによると1990年代、中央分離帯がない13メートル幅の片側1車線で事故が多発。毎年約100人が亡くなり、約400人が負傷した。死亡事故の7割以上が、はみ出しによる正面衝突だった。

 事態を受けて国は98年、日本の「暫定2車線」と似た片側1車線を改良し、ワイヤロープ付き2+1を導入。初めて敷設されたのが、イェブレのE4号線だった。以来、ストックホルムから地方に向かう一般国道を中心に整備が進み約2900キロまで延伸。劇的に事故は減り、死亡者数は約8割減少した。


早く設置すべき

 「もっと早くワイヤロープを設置していれば、救われた命があった」。イェブレ消防署で事故調査を担当する消防士マグナス・オストルンドさん(50)が、死亡事故に関する新聞記事のスクラップをめくりながら振り返った。

 消防士歴30年。忘れられない事故がある。93年12月、中央分離帯がないイェブレの高速道路(制限速度110キロ)を走行していた乗用車が対向車線にはみ出し、小学生らを乗せたバスに正面衝突。子ども1人を含む3人が死亡した。乗用車の運転手の居眠り運転が原因だった。現場に到着した時は既に手の施しようがなく、オストルンドさんは悲惨な光景を前に立ち尽くすしかなかった。

 消防署の調査では、あと5年早くワイヤロープが導入されていたら、バスの事故を含む死亡者22人のうち、16人の命が助かったと結論付けた。

 実際、導入後は、はみ出しによる正面衝突事故はなくなった。簡易ポールで上下線を区切っただけの日本特有の「暫定2車線」を写真で確認した、オストルンドさんは「ワイヤロープがなければ死亡事故は防げない。日本は一刻も早く設置すべきだ」と強調した。

2017年4月18日 無断転載禁止