山陰の暫定2車線問題 海外編 スウェーデン(2) 死傷者出さぬ国策

既存の2車線道路を上下3車線に再整備したワイヤロープ式防護柵付き「2+1」。20年足らずで2900キロまで延びた=3月、スウェーデン・イェーテボリ
低コストで「革命」実現

 1998年にスウェーデン独自の施策として運用が始まったワイヤロープ付き「2+1(ツープラスワン)」。大幅に事故死亡率を減少させた道路はいかにして生まれたのか―。

 「安全な道路をできるだけ安価で、直ちに増やすにはこの方法しかなかった」。発案者で、スウェーデン交通庁の元交通安全局長クラース・ティングバールさん(63)が当時を振り返る。

 同国で中央分離帯のある高速道路を建設するには、1キロ当たり約6億5千万円かかる。対して、既存の道路(上下2車線で幅員計13メートル)をワイヤロープ付き「2+1」に再整備するのに必要な費用は、1キロにつき5千万~7千万円。コストや整備期間を考慮すると、既存道路を有効活用するのが妥当だった。

 ティングバールさんは、狭い空間に設置でき、米国や英国で実用化されていたワイヤロープに着目。同時に追い越し車線が交互に入れ替わるフランスやドイツの「2+1」の例を参考にスケッチを作成した。

 現在は高い安全性に世界各国から視察が訪れるまでになったが、発案した当初は「車道が狭くなって窮屈になる」といった反対意見が多かったという。「発想するより、実現する方がはるかに難しかった」と述懐する。


クラース・ティングバールさんが考案段階で描いた「2+1」のスケッチ図。赤い線はワイヤロープ式防護柵を示す
蓄積データ反映

 2+1導入の礎になったのが、1人の死者、重傷者も出さないとの理念を掲げた国策「ビジョン・ゼロ」だった。97年に国が省令として示し、全8政党が支持して国会で承認された。

 人的ミスが起きるのを前提に「事故に遭っても重傷を負わない」との概念を道路設計に組み込んだ。重大事故をなくすために、道路設計者だけでなく一般利用者も責任の一端を共有すると規定した。

 また、国内で起きた重大事故全ての原因や解決策を徹底的に調査。月1回、消防や警察のリポートや解剖結果を基に専門家会議を開催し、蓄積したデータを道路設計に反映させる。

 国を挙げた地道な取り組みは実を結び、国内道路の総延長約10万キロにおける事故死者数は20年前の541人から、2016年は263人まで減少。20年は220人とする目標を掲げる。 約2900キロの「2+1」区間に限ると、導入前は年間約100人が亡くなっていたが、1998年の導入後は死者が8割減り、はみ出しによる正面衝突事故はなくなったという。


既存資源を利用

 「安全性は高く、コストは安い。国民には『貧乏人の高速道路』と呼ばれている」。首都ストックホルムに本社を構え、26万部を発行する新聞社「ダーゲンス・ニューヘーテル」。20年間にわたり自動車関連の報道に携わるラッセ・スヴァード記者(60)は2+1をこう表現した。

 80年代は毎週のように重大事故を取材した。国内では60~70年代に年間約1300人が命を落としたが、2+1の導入で重大事故は急減。渋滞は緩和され、平均速度は上がった。70年代に比べて交通量は20%増え、自動車利用台数が2倍の460万台に上っているのにかかわらずだ。

 「国が安全性向上に本腰を入れたのは大きく、マスコミは『革命』と呼んでいる。私は既存資源を有効利用した『スマート(賢い)な道路』と言いたいね」と誇らしげに語った。

2017年4月19日 無断転載禁止