高所平気症

 奥出雲町の渓谷に出かけ、緑の風景に何ときれいな吊(つ)り橋を架けたものだと、感心しながら渡っていると、橋の脇から下の川が見えた。とたんに今いる高さに気がついて、電気のような震えが走った。高い所は苦手だ▼ところがこの感覚も人による。マンションなど高層住宅で育ち、高い所を怖がらない子どもが増えているらしい。「高所平気症」と呼ばれる。ベランダからの転落事故の多くが関係しているとみられる▼子どもは転んだり何かから落ちてすりむいたりし、小学校に通う頃までに地面との高さを基準に高さへの恐怖心を育てる。生まれた時から高みの見物、転んでも痛くない絨毯(じゅうたん)の上で暮らすと、鈍くなるのかもしれない。環境は感覚を左右する▼衆参両院選挙で大勝利、世論調査では高い支持率、いわば、高層階、豪邸暮らしが続いているのが政権与党。下野した時の痛みはとっくに忘れたかのように緩みが目立ち、閣僚らによる不用意な言動が続いている▼山本幸三地方創生担当相の「学芸員はがん」発言。今村雅弘前復興相は3週間前にも発言撤回したのにも懲りず、「まだ東北で良かった」などと、被災者の痛みに無配慮な発言を繰り返した▼おごりと言われても仕方ない。リアルに痛みを感じている被災者への、想像力が欠けている。言いたいことは山ほどあるが、国民の痛みに鈍感な人は、所管省庁のトップに就くべきではない。「高いところから国民が見えてますか」。政権の「高所平気症」は、命取りだ。(裕)

2017年4月27日 無断転載禁止