山陰の暫定2車線問題 海外編 スウェーデン(3) ワイヤロープ式防護柵

ワイヤロープの性能を見極める実験を映像で説明するヤン・ベネールさん(右)=3月、スウェーデン・リンシェーピング、VTI
導入20年 有効性を実証

 時速110キロで走る重量0・9トンの乗用車が、20度の角度で鉄製のワイヤロープに突っ込む。ワイヤは一瞬たわみ、車体を勢いよくはね返した。

 スウェーデンの首都ストックホルムから南西に約180キロ。工業都市リンシェーピングにあるスウェーデン道路交通研究所「VTI」。国や民間企業が出資する独立機関にあるテスト場では、自動車に関連する実験が年間200~250件行われる。

 1998年に運用を開始した2+1(ツープラスワン)で、対向車線へのはみ出し事故を減らすために併設したワイヤロープ式防護柵もテストする。「まだまだ改善の余地がある」。次々に持ち込まれる製品の性能をこれまで約800回実験してきた、衝突安全研究技師のヤン・ベネールさん(57)が実験映像を再生した。


少ない初期投資

 映像の中には、50年代の米国テキサス輸送研究所でのワイヤロープ実験を録画したフィルムがある。ワイヤロープの発祥は米国とされ、スウェーデンでは90年代に実験が始まった。

 支柱の形状や設置間隔、ワイヤの本数、張力…。実験項目は多岐にわたる。重心の高い車はワイヤを乗り越え、小型車はワイヤに潜り込む恐れがあり、通常3本程度のワイヤの高さが重要になる。

 ベネールさんは「ワイヤを5~6本張り、支柱の間隔はたわみ具合が大きすぎないよう2~3メートルに狭くするのが理想だ。さまざまな車種や事故に対応可能になる」と強調する。

 初期投資が少なくて済むのがメリットの一つだ。スウェーデン交通庁によると、ワイヤロープを1メートル設置するのに必要な費用は通常4500~5500円。ワイヤ修繕を含めた2+1の維持費用は1キロ当たり年間22万円で、現在の敷設区間約2900キロではじき出すと6億3800万円で済む。中央分離帯を設けた道路を1キロ新設するのとほぼ同じ金額だ。


「日本でも機能」

 本格導入から間もなく20年。はみ出しによる衝突事故はほぼなくなり、衝突でたわんだワイヤに対向車がぶつかりそうになった事例も2件しかない。

 交通庁の道路設計専門担当オーケ・ロフクヴィストさん(64)は「ワイヤロープが有効な手段であるのはスウェーデンの歴史が証明している。日本の狭い道路でも絶対に機能する」と明言する。

 日本への導入を考えると、道路整備の指針となる「道路構造令」が焦点になる。中央分離帯の設置には最低1・5メートルの幅員を確保するよう求めているからだ。国土交通省は1・5メートル未満の中国横断自動車道広島浜田線をはじめ、国内12路線の暫定2車線(片側1車線)区間にワイヤロープを設ける緊急対策に乗り出す。重大事故防止へ向けて狭い幅員でも機能するかを見極めていく。

 スウェーデンでは日本のような設置基準はない。ロフクヴィストさんはワイヤロープの支柱の直径0・1メートル、その両側に0・5メートルずつ計1・1メートルの幅員を確保するのが望ましいとするが、実際は1・1メートル未満で設置している路線がある。

 2+1の発案者で、交通庁の元交通安全局長クラース・ティングバールさん(63)は「狭い空間の有効活用を考え、解決策を探ることが大切だ。日本は1・5メートルにこだわらなくていい。必要に迫られているのであれば、柔軟に運用すべきだ」と提言した。

2017年4月20日 無断転載禁止