山陰の暫定2車線問題 海外編 スウェーデン(4) ナロー2+1

スウェーデンの「ナロー2+1」のイメージ
新手法追求 事故ゼロを

 スウェーデンが国策として、重大事故が多発した片側1車線(上下2車線の幅員計13メートル)の道路を、ワイヤロープ式防護柵付き「2+1(ツープラスワン)」に再整備して約20年。今も安全性を追求する取り組みが進む。

 その一つが、上下2車線の幅員が約9~10メートルと狭い道路に、延長約1キロの追い越し車線を部分的に設ける「ナロー(狭い)2+1」だ。中央帯にはワイヤロープや、音や振動で対向車線へのはみ出しを警告する「ランブルストリップス」を備えて安全性を高める。

 2009年から運用を開始し、地方の道路を中心に145キロまで延伸した。制限速度は原則、時速100キロに設定している。

 通常の2+1が片側2車線と1車線を規則的に繰り返すのに対し、ナロー2+1は追い越し車線を含む上下3車線と、上下2車線が混在する。日本の国土交通省が事故防止や渋滞緩和を目的に、中国横断自動車道岡山米子線などに増設する「付加車線」に類似する。

 スウェーデン交通庁の調査では、死傷者が約6割減少した。同庁の道路設計専門担当オーケ・ロフクヴィストさん(64)は「狭い道路で効果を出している好例だ。上下合わせて幅員が10・5メートルしかない日本の暫定2車線(片側1車線)でも適用できるだろう」との見方を示した。


鋼管防護柵設置

 大型トラックが衝突しても、びくともせずはね返す。メーカーや輸入業者などでつくる、スウェーデン道路&橋防護柵協会が作成した実験映像に、鋼管による防護柵「スチールビーム」が映し出された。日本の高速道路でも試験的に設置されており「ボックスビーム」と呼ばれる。

 設置にかかる初期投資は1メートル当たり約8千円で、約5千円のワイヤロープより高いが、耐久性に優れる。「ワイヤロープの修繕が負担になる中、維持管理費が抑えられる。もっと増えていく可能性が高い」。同協会代表のヨーラン・フレードリクソンさん(57)が展望する。

 有事の備えでやや不安が残る。ワイヤロープは支柱を引き抜いて柵を開放し、救急や警察の車両を出入りさせたり、車両を転回させたりすることが容易にできるが、スチールビームは緊急開口部がない。


データ示せるか

 安全性向上に向けた模索は続く。「2+1は非常に有効な選択肢だが、湯水のように予算は確保できない。特に地方の路線で安全性を高める方策を国に働き掛けている」。車の所有者約10万人が加盟するスウェーデン自動車運転手全国連盟の交通安全担当カール・セイドリッツさん(45)が力を込める。

 連盟によると、2+1は増えているものの、10年後も中央分離帯がない制限速度90キロの道路が約5千キロ残る。交通量が整備の判断材料となるのは日本と同じで、地方は中央分離帯の設置が遅れがちという。

 国は1日の平均交通量が3500台以上の道路にはワイヤロープ、未満はランブルストリップスを採用。監視カメラを急速に増やして速度順守を促す意識を浸透させ、重大事故防止に効果を挙げている。

 冬は都市部からのスキー客でにぎわうダーラナ地方の国道は昨秋、念願の2+1への再整備が決まった。連盟の支部が国に粘り強く掛け合った成果だった。セイドリッツさんは「命を守る高速道路に対する願いは地方も同じだ。熱意を持ち、改良に必要な事故率などのデータを示せるかどうか。不断の取り組みが必要になる」と説いた。

2017年4月21日 無断転載禁止