山陰の暫定2車線問題 海外編 スウェーデン(5) 日本への導入

開発当初のワイヤロープの原型を前に、実用化への期待を語る平沢匡介主任研究員=3月、札幌市、寒地土木研究所
先進地学び応用的試行

 「日本に応用できるんじゃないか」。2007年9月、スウェーデン中部の地方都市ボルレンゲ。道路科学技術の国際会合に参加した北海道開発土木研究所(現寒地土木研究所、札幌市)の平沢匡介主任研究員(53)は、一般国道に設けられたワイヤロープ式防護柵に興味を抱いた。

 北海道で中央分離帯がない地方道の事故対策を研究する。はみ出し事故が多発する日本の暫定2車線(片側1車線)で採用できると直感した。「安全で安価。何より『外せる』防護柵という点が決め手だった」。有事の際には支柱を引き抜いて緊急開口部を作れると聞き、08年から研究開発に着手した。


すべてが手探り

 研究所構内には、自作したワイヤロープの原型が残る。「失敗の連続。すべてが手探りだった」。スウェーデンを再度視察して仕組みや施工法を学び、海外製品を持ち帰って実験に成功した。しかし、日本の設置基準に照らすと、一般国道仕様の海外製品は、規格の厳しい日本の高速道路で使用できないことが判明。独自に日本型ワイヤロープを開発するしかなかった。

 衝突時のはみ出し幅を基準値の1・5メートル以内に抑えないといけない。ワイヤの本数や高さ、支柱の間隔について試行錯誤を重ねたが、10、11年は成果が出なかった。重圧がかかる中で「一人でも多くの命を救う」との思いを心の支えに、横に張るワイヤを4本から5本に増やすなどし、12年に特許を取得した。

 東日本高速道路と寒地土木研究所が今年3月、北海道苫小牧市で行った実験では、日本製ワイヤロープが重量20トンの大型トラックのはみ出しを防いだ。「日本製は性能が高いと自負できる。実用化に向けた第一歩を踏み出せた」と今後を見据える。


施策効果見極め

 日本国内の暫定2車線で重大事故が後を絶たない状況に国土交通省が本腰を入れ始めた。「命を守る緊急性に鑑み、喫緊に正面衝突事故を防止する対策が求められている」。16年12月、有識者らでつくる技術検討委員会を立ち上げた。

 同省は今春から、中国横断自動車道広島浜田線をはじめ、国内12路線の暫定2車線区間計100キロにワイヤロープを試行設置する。参考にしたのは、わずか数分で緊急開口部が作れるスウェーデンの事例。事故防止や走行性、緊急時の対応、維持管理など多角的な項目で効果を確かめる。

 国交省がスウェーデンの施策で興味を示しているのは「ナロー(狭い)2+1(ツープラスワン)」と呼ばれる道路構造だ。上下2車線の幅員が約9~10メートルと狭い道路に、延長約1キロの追い越し車線を部分的に設ける。同省が中国横断自動車道岡山米子線など4路線で増設する「付加車線」に似た構造で、速度低下が著しい区間で効果的とする。交通量が少なく暫定2車線の長期化が見込まれる路線では、ワイヤロープ付きナロー2+1も参考例とする。

 石川雄一道路局長は、中央分離帯を設けた4車線が最良としつつ「新たな施策の課題と効果を十分に見極め、今後の展開を考えたい」と語る。

 片側1車線で頻発した事故を教訓に「一人の死者、重傷者も出さない」との理念を掲げた国策に基づき、重大事故を激減させたスウェーデン。既存道路を有効活用する柔軟な発想や国を挙げた取り組みは、日本特有の暫定2車線の課題解消に欠かせない。

2017年4月22日 無断転載禁止