山陰の暫定2車線問題 海外編 韓国(4) 4車線化の効果

交流増、死者ゼロの恩恵

 慶尚南道居昌(コチャン)郡の山あいにあり、美しい渓流と中世の建築物が残る景勝地・捜勝台(ススンデ)に3月、古民家を改造した民宿が相次いで開業した。地元の60代女性は「寂しい集落がにぎやかになった」と笑みを浮かべた。

 居昌郡は人口246万人大都市・大邱(テグ)の西60キロに位置し、人口は6万3千人ほど。捜勝台はその中心部からさらにバスで40分かかる不便な場所にあるが、2016年1~6月の入り込み客数は約4万4千人と前年同期比で17%増えた。

 郡内の他の観光地もにぎわい、散歩コースがある休養林は、16年6月の利用客が前年同月比9・7%増の約6万2千人に。山間部にある温泉施設は16年の客数が前年比77・7%も伸び、約13万8千人を数えた。


人の流れが一変

 観光振興の起爆剤になったのが、最寄りの高速道路・光州(カンジュ)大邱線(延長176キロ)。01年に始まった暫定2車線(片側1車線)から4車線への改良事業が15年末に終わり、郡周辺の人と車の流れが一変した。

「光州大邱線の4車線化で仕事が増えた」と喜ぶチョン・キさん=3月、慶尚南道居昌郡
 郡庁によると、16年1~6月に最寄りのインターチェンジを抜けて郡内に入った車は約108万台。前年同期比で29%増えた。郡には鉄道がなく、交通インフラは道路に頼る。4車線化を機に大邱などから観光客が車で押し寄せたとみられ、企画監査室の呉光鎬(オグァンホ)さん(42)は「4車線化の効果は想像以上だ」と驚く。

 韓国道路公社は沿線の10市郡で同様の傾向を確認。4車線化の交流人口拡大効果は広域にわたった。

 同郡では観光産業にとどまらず、地域経済全体を浮揚する追い風にもなった。

 郡内で家電修理店を経営するチョン・キさん(64)は「居昌と大邱を行き来して仕事を請け負うことが増えた」と喜ぶ。

 チョンさんによると、暫定2車線のころは追い越しができず、制限速度80キロでも60キロしか出せないこともあった。4車線化で追い越しが可能になり、制限速度も100キロにアップ。居昌-大邱間の所要時間は往復で1時間近く短くなった。時間距離の短縮が、大邱との経済の結び付きを強くしたとみられる。

 同公社によると、景気浮揚効果は納税額にも見え隠れする。過去に4800万ウォン(約467万円)以上を納税した郡内150社の納税額を調べた結果、16年は前年に比べ、1社平均で1カ月当たり22万ウォン(約2万1千円)増えた。


郡の人口減らず

 「4車線化で交通アクセスが良くなり、大都市の大邱に住民を吸い取られる『ストロー現象』が起きるのではないか」。実は、居昌の郡庁と議会は当初、強い懸念を抱いていた。

 ふたを開けると、16年12月の人口は前年同期比で76人増。関係者は胸をなで下ろした。大邱にある診療態勢の整った病院に通いやすくなるなど、数字に表れない安心感も感じられるようになった。

 そして、何物にも代え難い成果があった。光州大邱線に暫定2車線区間が残っていた12~15年、対向車線にはみ出す事故で命を失った犠牲者は44人を数えたが、16年はゼロ。韓国道路公社建設計画課の宋權洙(ソンクォンス)次長(46)は「中央線からのはみ出し事故を根本から遮断した4車線化は画期的だ」と力説した。

2017年4月27日 無断転載禁止