森友問題音声記録/不透明な経緯の解明を

 大阪市の学校法人「森友学園」への国有地売却問題で、2016年3月に当時理事長の籠池泰典氏が財務省の担当者と交わしたやりとりの音声記録が残されていた。その中で籠池氏は安倍晋三首相の昭恵夫人の名前を出すなどして押し気味に交渉を進め、財務省側は学園側と結んだ定期借地契約について「特例」と繰り返し説明している。

 前後の経緯を整理すると、13年夏、籠池氏は閣僚経験者の自民党参院議員側に「まず国有地を借り、その後に購入したい」と希望を伝えた。近畿財務局と交渉を重ねる中で何度も議員側に働き掛けなどを依頼。15年5月、10年以内に買い受ける条件で定期借地契約にこぎつけ、小学校の校舎建設工事を始めた。

 その年9月に昭恵夫人が小学校の名誉校長に就任。11月には夫人付の政府職員が籠池氏から契約期間延長などの相談を受けて、財務省に照会した。そして16年3月、小学校用地で地中から新たにごみが見つかり、財務省側との面会となる。相手は先に夫人付職員の問い合わせに答えた理財局の国有財産審理室長とみられる。

 評価額から8億円余りも値引きされ、売買契約が結ばれたのは面会の3カ月後のことだ。不透明な交渉経緯の解明に政府と与党が背を向け続ける中、その一端が見えてきた。この機を逃さず、徹底解明につなげたい。

 音声記録によれば、国有財産審理室長とみられる担当者との面会で籠池氏は、ごみが見つかり校舎建設工事に影響が出るのを懸念しているとした上、それ以前に学園側が立て替えたごみ撤去費用の支払いが遅れていると近畿財務局を批判。「昭恵夫人から聞いてもらったと思うが、財務局がどんどんおかしな状況になっている」と訴えた。

 さらに「支援いただいている議員もいる」と政治家との関係もにおわせた。財務省側は「貸し付けは特例」と定期借地契約が特別扱いだったことを説明。財務局に対応させるとした。

 夫人付政府職員の照会も含め、昭恵夫人の存在が財務省側にすり込まれたのは間違いないだろう。籠池氏は国会証人喚問で照会について「財務省に多少、動きをかけていただいた。ごみが出た後、急転直下、物事が動いた」と振り返った。

 財務省は、なぜ「特例」にしたのかを説明すべきだ。その後も小学校の開校予定に間に合わせるため、ごみ撤去費の算定を専門業者ではなく、過去にそうした経験のない大阪航空局が行うなど学園側へのさまざまな配慮が見られ、最終的に籠池氏は「想定外の大幅値下げ」を手にした。

 ところが財務省は「適正な処理」の一点張りだ。交渉の経緯をただされても「交渉記録は事案の終了とともに速やかに廃棄した」と説明。調査を求められても拒み続けている。記録はないし、調査もしないが、政治家の関与などは一切ないとする。官邸も、昭恵夫人付職員による照会は何ら問題ないとの姿勢だ。

 音声記録を巡り、民進党は籠池氏からの聞き取りを実施した。今後、対象を広げたり、第三者が参加する調査態勢を整えたりして事実の掘り起こしを進める必要がある。財務省が廃棄した記録の復元も課題となろう。

2017年5月1日 無断転載禁止