日ロ首脳会談/前のめりの姿勢に懸念も

 モスクワを訪問した安倍晋三首相はロシアのプーチン大統領との会談で、昨年末の首脳会談で合意した北方領土での「共同経済活動」の実現に向け、事業案を検討するため専門家らによる合同調査団を近く北方四島に派遣することで合意した。

 元島民の4島へのビザなし訪問でもこれまで船に限られていた墓参の渡航手段を空路まで広げ、船で訪れる場合の入域手続きの地点も拡大することを確認した。

 元島民は高齢になっており、訪問がより行いやすくなることは歓迎したい。ただ共同経済活動に関しては根本の課題が先送りにされている。共同経済活動の主眼は、活動実施に当たって日ロのどちらの法律にも基づかない特別なルールをつくり、双方の主権を害さない形で共同活動の実績を積み重ねることで、領土問題解決につなげていくという戦略だったはずだ。

 しかし特別なルールづくりは3月から始まった次官級協議でも議論は進んでいない。現状のままではロシアの法律が適用され、領土問題は棚上げされることになりかねない。日本政府の前のめりの姿勢を懸念する。

 共同経済活動に関しては、3月の次官級協議で双方が漁業や観光、医療分野などで具体的な事業案を示しあった。今回の首脳会談では事業案の優先順位をつけるために官民調査団の派遣を決定。安倍首相は「協力を積み重ねていく双方の努力の向こうに平和条約がある」と強調した。

 ただ活動の前提合意はもともと玉虫色の内容だ。昨年末の首脳会談後に、安倍首相は「日ロ両国の平和条約問題に関する立場を害さないという共通認識」に基づき「特別な制度」を創設すると述べた。

 これに対してロシア側はロシアの法制度を適用する考えを示しており、プレス向け声明でも「しかるべき法的基盤の諸問題が検討される」とあいまいな表現にとどまった。実務者の協議でルールづくりの決着を急ぐ必要があろう。

 今回の首脳会談では北朝鮮情勢がもう一つの主要課題だった。両首脳は緊密に連携し、北朝鮮の核・ミサイル開発に対し、国連安全保障理事会の決議の履行と、さらなる挑発行動の自制を働き掛けることで一致した。

 だが両首脳の間のずれも浮き彫りになった。プーチン氏は「軍事的な圧力は自制すべきだ」と指摘し、原子力空母カール・ビンソンを朝鮮半島近海に派遣する米国と、その空母と共同訓練を実施する日本政府にくぎを刺した。

 大統領は核問題を巡る6カ国協議の再開も提唱した。ただ日本側は6カ国協議の議長国の中国に北朝鮮への圧力を強めるよう求めており、核・ミサイル開発が続く中での再開は困難との構えだ。

 ロシアは日本が北朝鮮制裁の一環として入港を禁止している貨客船「万景峰(マンギョンボン)」を使った定期航路を北朝鮮との間で近く開く方針だ。これも日本けん制と受け取れる。

 米国のシリア攻撃を巡って米ロが対立する中、いち早くトランプ米政権支持を表明した安倍首相に対し、ロシア側は不満を募らせ、日本のミサイル防衛体制に関しても懸念を示している。プーチン氏との個人的な信頼関係を自負する安倍首相だが、両大国の間でのかじ取りは難しい。

2017年4月29日 無断転載禁止