紙上講演 立教大教授 郭 洋春氏

立教大経済学部・郭洋春教授
 TPPとこれからの地域経済

   農業と観光面重視を

 山陰中央新報社の石見政経懇話会、石西政経懇話会の定例会が27、28の両日、浜田市と益田市であり、立教大教授の郭洋春(カクヤンチュン)氏(57)=アジア経済論=が「TPP(環太平洋連携協定)とこれからの地域経済」と題して講演した。TPPの形骸化を指摘した上で、地域経済を活性化させるヒントを提言した。要旨は次の通り。

 1月に米国のトランプ大統領がTPPを離脱する大統領令に署名した。通商で2国間主義を強める米国、アジアで主導権を握ろうとする中国をけん制するため、安倍政権は米国抜きのTPP発足にかじを切ろうとしている。TPP交渉国を含めた域内の国内総生産(GDP)を合計すると、9割以上を日米が占める。米国抜きのTPPは大きな経済効果が得られない。

 日本経済は物が売れない成熟社会になっている。これからの時代、農業と観光が日本をリードする産業になる。伸びしろを期待できるのが外国人観光客だ。2014年の受け入れ総数は1341万人、世界のランキングでは22位と少ないが、まだまだ増やすことができるはずだ。来日する観光客の7割強が中国、台湾、韓国からで、特に中華圏に注目すべきだ。

 中国人観光客の「爆買い」はひと息ついたとされるが、実はアジア圏域では、所得の中間層が増えている。日本人の平均年収440万円とほぼ同じ所得の階層が約18億人もいて、今後も増加が見込まれている。中国では残留農薬が問題となっており、生で野菜を食べる習慣がないほどだ。中国人は豊かな自然や安心・安全な食べ物を楽しみに来日する。

 石見地方には彼らが求める要素がそろっている。石見神楽といった伝統文化を体験型の観光プログラムに発展させ、個人のブログで楽しさが広まれば、交通が不便な場所でも多くの観光客が訪れる。石見地方は最先端を行くことができる。

2017年4月29日 無断転載禁止