砂丘と璋也

 鳥取市民の好物に地元産のせんべいがある。コメでなく、小麦粉を原料にしたせんべい。個人的にはピーナツ入りが一番好きだが、ポピュラーなのは波打つような形に曲げ、白い生姜(しょうが)蜜を塗った「生姜せんべい」だ▼鹿野城主となった戦国大名・亀井茲矩(これのり)が同市気高町に形成した生姜産地が背景にあり、江戸時代から続く庶民の味覚。「雪がうっすら積もった冬の鳥取砂丘」をイメージした造形は鳥取の民芸運動指導者・吉田璋也(1898~1972年)が和菓子店とともにアレンジし、土産物としてプロデュースしたらしい▼中国大陸の肉料理を持ち帰り、これが「しゃぶしゃぶ」の原型になったとされ、芸術のみならず食文化にも足跡を残す璋也はさらに砂丘の保護運動に取り組んだ横顔を持つ。軍の演習地だった砂丘で戦後、飛砂を防ぐ植林が進むのに反対し、1955年の天然記念物指定に一役買った▼大正時代、砂丘地に向くラッキョウ栽培が本格化し、特産に育った例が示すように、かつて砂丘は克服すべき相手だった。保護し、残そうという発想は奇抜だったに違いない。鳥取県を代表する観光名所の誕生には、璋也の先見の明があった▼砂丘での落書きを禁じる条例の制定など景観保全に取り組んできた県は、砂丘を含む県内の星空観測適地で、妨げとなる人工的な光を規制するなどの「星空保全条例」制定の検討を打ち出した▼夜空を眺めるスポットとしても砂丘をアピールするこの機会に、あらためて璋也の尽力に光を当てたい。(志)

2017年4月30日 無断転載禁止