米艦防護/活動の検証が必要だ

 海上自衛隊のヘリコプター搭載型護衛艦「いずも」は、太平洋上を航行する米海軍の補給艦と合流し、周辺の警戒監視活動などを行う。これは安全保障関連法に基づいて海自の護衛艦が米補給艦を守る「武器等防護」の活動だ。

 昨年3月に施行された安保関連法では、南スーダンに派遣した国連平和維持活動(PKO)の陸自部隊に「駆け付け警護」の任務を付与したが、実行はしていない。安保関連法の新任務を初めて実際に運用することになる。

 北朝鮮の核・ミサイル開発を巡り米国が原子力空母カール・ビンソンを日本海に派遣するなど緊張感が高まっており、政府は自衛隊と米軍の一体化を進める新たな任務を実施しても、世論の批判は小さいと判断したのではないか。日米同盟をアピールし、北朝鮮をけん制する狙いもあるとみられる。

 日本海ではなく北朝鮮から遠い太平洋側での活動には、安保関連法の任務の実績づくりという目的もうかがえる。活動内容の情報公開は「特異な事象が発生した場合」に限られるなど、チェックの仕組みはほとんどないため、日米の活動一体化をどこまで進めるのか活動の検証は必要だろう。稲田朋美防衛相も初の任務についてきちんと説明するべきだ。

 「武器等防護」の活動は安保関連法に盛り込まれた自衛隊法の改正で、平時や武力攻撃に至らないグレーゾーン事態に、「日本の防衛に資する活動」を行っている他国軍を対象に認められた。

 昨年末に国家安全保障会議(NSC)で決定した運用指針では、弾道ミサイル発射に関する情報収集や日本の平和と安全に重要な影響を与える事態での輸送や補給、自衛隊の能力を向上するための共同訓練など三つのケースを挙げて、適用の対象例とした。

 また「極めて受動的、限定的で必要最小限」との制限は付けながらも武器使用を認めており、米艦が武装集団の攻撃を受けた場合は武器を使用する可能性がある。

 実施の運用は防衛相の判断に委ねられている。防衛相は前年に実施した警護結果についてNSCに報告するが、平時の運用の情報公開は、自衛隊や米軍などに「具体的な侵害が発生した場合」に限られている。政府は当初、日米共同訓練での実施を検討していたとされるが、朝鮮半島情勢を受けて実施に踏み切ったとみられる。

 護衛艦「いずも」は、活動後は米補給艦から離れてシンガポールに向かう。ただ補給艦はその後、北朝鮮の弾道ミサイル発射に備えて日本周辺に展開中の米艦船やカール・ビンソン周辺の艦船に補給する可能性があるという。

 北朝鮮に圧力をかける狙いでトランプ米政権が派遣したカール・ビンソンは航行中に空海の自衛隊との共同訓練も実施した。「いずも」は海自最大の艦船だ。米政権と足並みをそろえた行動と、海外からは受け止められるだろう。

 中国やロシアが北朝鮮問題の対話での解決を主張し、6カ国協議の再開を提起するのに対し、安倍晋三首相は「圧力を高めていく必要がある」として協議再開に否定的な考えを示している。圧力一辺倒で北朝鮮の暴発を防ぐことができるのか。冷静で多角的な戦略も求められる。

2017年5月2日 無断転載禁止