松江クラシックス

 松江に新たな音楽文化が根付きつつある。14日に開幕する松江クラシックス。国内外で活動するバイオリニストの朝枝信彦さん(61)が音楽監督を務め、プロ奏者と市民演奏家でつくり上げる音楽祭は3年目を迎えた▼始まりは偶然だった。東京出身でドイツ・マンハイム国立歌劇場管弦楽団コンサートマスターなどを務めた朝枝さんが、鍼灸(しんきゅう)治療を受けるために知人のいる松江に滞在。地元のアマチュア演奏家との交流などを通して音楽祭を思い付いた▼世界的なバイオリニストを引きつける豊かな音楽文化がもともと地域にあったということだろう。例えば山陰フィルハーモニー管弦楽団は1973年から活動し、年末恒例の県民手づくり第九コンサートは四半世紀にわたって続く▼2015年のクラシックス初回はビバルディ、16年の第2回はバッハをテーマに、国内外から招いたプロと地元の市民演奏家が1~2週間の間に複数の演奏会を開いた。第3回はモーツァルトだ▼参加する市民演奏家は回を重ねるごとに増えて今回は約70人になった。2月から朝枝さんらの指導を受け、音楽祭期間中は集中講習もある。「10年かけて地域に定着させたい」という朝枝さん。自分が引退後も受け継ぐ人材の育成に力を注ぐ▼松江には小泉八雲の縁でジャズやアイリッシュ音楽が流れる。伝統の鼕(どう)行列には独特の響きがある。これらに加えて、城下町のあちこちで弦楽四重奏やバイオリン独奏が奏でられる光景を想像する。国際文化観光都市の輝きが増す。(輔)

2017年5月3日 無断転載禁止