古代出雲のホームページ

 島根に暮らしてよかったと思う魅力の一つに温泉がある。雲南市の海潮(うしお)温泉と湯村温泉、松江市の玉造温泉に通う。湯船にゆったり身を浸せば、疲れが取れ、明日への活力がよみがえる▼三つの温泉には共通点がある。奈良時代の733年にまとめられた「出雲国風土記」に登場する。1300年間も民衆に親しまれてきた効能が豊かな湯。中でも玉造は全ての病が治る「神湯(かみのゆ)」とたたえられた▼約1万7千字におよぶ出雲国風土記は、出雲が素晴らしい国だと時の政府にアピールした本だ。出雲のホームページ、ガイドブックとも言える。出雲市の古代出雲歴史博物館で開催中の企画展から、編集に携わった人々の郷土愛が伝わってくる▼出雲国風土記は冒頭、壮大な国引き神話を掲げる。松江の中海沿いで男女が出会い婚活に励んだ姿を描く半面、安来では父親がワニに命を奪われた娘の敵を討つ逸話を記載し、グルメやレジャー情報も盛る。人々の暮らしや喜怒哀楽が立ち上る▼風土記は政府が各国の特産や地名の由来、伝承などを書き提出を求めた報告書。全国各地で作られたが、ほぼ完本で残るのは出雲だけ。出雲国風土記は日本の古代史像を描く道しるべにもなる▼東京五輪がある2020年、東京国立博物館で出雲と大和に焦点を当てた企画展が開催される。日本の博物館を代表する施設で地方の古代史を題材に催しが開かれるのはまれで、風土記も紹介される。古代から連綿と受け継いできた出雲の魅力を発信する絶好の機会としたい。(道)

2017年5月4日 無断転載禁止