日本遺産認定を地元知る好機に

 厩戸皇子(うまやどのおうじ)(聖徳太子)が摂政になるまでを描いた「日出処の天子」をはじめ、歴史や神話をテーマに奇抜な想像力を展開する漫画家、山岸涼子さんの作品に「月読」(1986年)がある▼主人公は、イザナギが汚れを落とした時に生まれた三柱の神「三貴子(さんきし)」の一柱であるツクヨミ。姉神がアマテラス、弟神がスサノオだ。姉神にかわいがられるスサノオとは対照的に、姉神に冷たい態度をとられるツクヨミの孤独な心情が切なく、神話を身近に感じられた作品だった▼ツクヨミは三貴子でありながら、古事記や日本書紀にほとんど登場しない。祀(まつ)る神社も全国に数えるほどしかなく、その一つに出雲市の日御碕神社の摂末社「月読(つきよみ)社」がある▼日御碕神社は、アマテラスを祀る「日沈(ひしずみ)宮」とスサノオを祀る「神(かみ)の宮」の両本社を総称する社。月読社は「我二神を慕いてこの山に鎮まり万物を恵まむ、との宣託あり」とされ、少し離れた山の頂にある▼神話でも太陽を象徴するアマテラスの怒りを買い、日と月は離れた場所に住むようになったとある。三貴子がそろって祀られる例はなく、日御碕で夜を守るツクヨミも大事に祀るのは、日本海に沈む夕日を神聖視してきたからだろう▼日御碕の海岸線から稲佐の浜にかけてのエリアが「日が沈む聖地出雲」として日本遺産に認定された。月読社を訪ねると、人知れずこの地を守っている有難みを感じる。知らない歴史はまだある。古来の人々が大事にしてきた文化や歴史を再認識する好機にしたい。(衣)

2017年5月8日 無断転載禁止