世事抄録 夜空のむこう

 心身の増強を図るため、早朝の散歩を始めたのは、還暦を過ぎてからであった。勇を鼓して、妻にごみ捨て係を申し出た。“粗大ごみ”がごみを運び、その足で40分の散歩を開始したのである。その日の気分で川沿いコースか山路コースを決める。季(き)の移ろいを感じながら、イヤホンから流れる化石のような音楽を聞き、時が流れる道程を楽しむ。

 朝だけでは物足りなくなり、古希を迎えた3年前からは、夜も歩き始めた。夜の静寂、頭上に果てしなく続く宇宙。点にも満たない自分の存在に気づく。山陰中央新報のこども新聞「週刊さんいん学聞」に載っている「さんいん きらめく星座」を見て、星の観察をすることも楽しみとなった。まず、月、火星、金星の位置を確かめる。分かりやすい解説を頼りに星座を見つけた時の喜びは格別である。

 真上を向き続けると老人はふらつくので、途中、「星の館」と名付けたあぜ道入り口の手すりに腰掛けて観察する。いつか流れ星を見たが、「あっ」という感嘆詞が流れに乗って消えた。願を掛けるまもなく、無念であった。

 米国のNASAが地球によく似た太陽系外惑星を39光年先の宇宙で発見したとのこと。地球外生命の存在に期待が高まる。地球のきょうだい星よ、生きてる間に現れてほしい。ロマンは夜空のむこうに限りなく広がる。

(浜田市・清造)


2017年5月4日 無断転載禁止