大山から海への恵み

 国立公園大山のイメージが強すぎるのだろうか。大山町にある鳥取県漁協中山支所で、海藻アカモクの6次産業化に取り組む小松美加さんは、山陰両県のスーパーで試食販売をするとお客に「大山町に海があるなんて知らなかった」と必ず言われる▼表面を覆う強いぬめりと、食物繊維フコイダンの豊富さが注目されるアカモクは、新芽が出る4、5月が収穫期。海藻の胞子で濁り気味となった海岸で、漁師が潜って採取する▼知名度こそ低いが、大山町の海の幸は海藻だけではなく、サザエやアワビ、イワガキも美味。ただし同支所の水揚げは、残念ながら地元では流通しない。京都では知る人ぞ知る逸品のため、現地の市場関係者から「全部うちに送れ」といわれ、高値で取引されるからだ▼豊潤な海をもたらすのは西日本有数のブナ林に覆われた秀峰大山だと、漁業者は口をそろえる。長い年月をかけて山にしみ込んだ雨水や雪解け水は、ミネラルをバランスよく含む。これが川や地下水脈を通じて海に流れ込み、プランクトンや海藻の成長を助け、豊かな生態系の土台となる▼鳥取県水産試験場の宮永貴幸場長によると、県内各地で取り組むアワビやサザエの稚貝放流でも、成長がいいのは大山町だといい、「間違いなく大山の水の恵み」と太鼓判を押す▼伯耆富士あるいは出雲富士と称される山の恩恵はこうして海にまで広がり、まさに裾野が広い。海と山の良さをひとところで味わえる田舎暮らしならではのぜいたくさは格別だ。(示)

2017年5月10日 無断転載禁止