韓国新大統領就任/現実路線での対処を望む

 韓国の大統領選挙で革新系最大野党「共に民主党」の文在寅(ムンジェイン)候補が当選し、新大統領に就任した。保守からの政権交代は9年ぶりになる。朴槿恵(パククネ)前大統領が罷免され、収賄罪などで起訴されるに至った政治混乱に終止符を打ち、北朝鮮の核・ミサイル開発を巡り高まる緊張に、日米や中国などと協調する現実的な路線で対処するよう望みたい。

 特に、歴史問題が常にくすぶる日本との関係を修復し、相互理解と安定した共存関係を構築する方向に踏み出す決断を求めたい。歴史問題と、安全保障や経済関係など現在直面しているさまざまな課題を切り離して取り組むことが、膠着(こうちゃく)した日韓関係を打開する近道だ。

 文氏は従軍慰安婦問題に関し、日本と2015年12月にまとめた政府間合意について選挙前から見直しを主張、選挙公約でも再交渉を訴えていた。朴前政権の政策を否定することが有権者の支持を得やすいという選挙戦略上の必要性があったのかもしれない。

 しかし、政権が交代したからといって、前政権が外国政府と了解した合意を白紙化、振り出しに戻すことが正当化されれば、外交交渉は成り立たず、韓国の信用度が問われる。国際的な信義の重要性を考えるべきだ。

 朴前大統領は就任直後から歴史問題を日韓関係改善の前提条件のように位置づけ、冷却した関係が長期化。結局、在任中に一度も隣国である日本を訪れることのないまま、権力の座から追い落とされた大統領となった。日韓首脳の相互往来が途絶えた空白を早期に埋める努力が必要だ。

 関係を再構築する契機となるのが、韓国政局の混乱で日本での開催が昨年から延期されている日中韓首脳会談だ。文氏が首相任命をはじめ政権の陣容を整えるには1カ月ほど時間が必要とみられる。

 この間に日本は、早期の会談実現に向け働き掛けを強めると同時に、慰安婦合意の再確認と、ソウルの日本大使館、釜山の総領事館の前に設置された少女像の撤去に道筋をつける努力を続けるべきだ。

 韓国外交は朴前大統領の政治スキャンダルにより、ほぼ半年以上、機能を喪失する局面に追い込まれた。その間、北朝鮮を巡る安保環境は悪化の一途をたどり、日米や中国、ロシアなど周辺国の力学関係も変化した。文氏が公言する北朝鮮への融和路線が独善的にならぬよう日米との政策調整が何より必要だ。

 南北間の経済交流などを再開すれば、北朝鮮の核・ミサイル開発にブレーキをかけて非核化を迫るために制裁圧力を強める国際社会の流れに逆行することになる。韓国が制裁包囲網の抜け道に利用されれば、国際社会で孤立しかねない微妙な状況に置かれていることを認識すべきだろう。

 文氏は就任に際した演説で、「正義」の実現と「原則重視」を繰り返し強調した。格差社会の是正や権力と財界の癒着の温床になった財閥の改革への意気込みを示したかったのだろう。当選の追い風になったのも、朴前大統領による国政混乱に怒り、公平な社会建設を求める若い世代を中心とする有権者だった。

 新政権発足に際し政治理念を提示することは必要だが、原理原則に縛られすぎないよう柔軟さも求めたい。

2017年5月11日 無断転載禁止