持続可能な開発目標/重要さの認識を広めよう

 地球温暖化などの環境問題が深刻化し、森林資源や漁業資源の減少が目立つ。経済のグローバル化によって発展途上国の成長は実現したが、多くの国で格差が拡大し、深刻な貧困が続いている。

 先進国を中心とする大量生産・大量消費型の経済活動が拡大し、そこに天然資源を輸出する途上国で乱開発が進んだことが原因だとされる。

 人間の経済活動の基礎となる地球生態系の限界が叫ばれ、「このままのやり方を続けていては環境も経済もだめになる」との危機感さえ出ている。それに応える形で2015年、国連の場で各国が合意したのが「持続可能な開発目標」(SDGs)だ。

 30年までに自然破壊に歯止めをかける一方で、貧困や飢餓を廃絶、全ての人に働きがいのある雇用を提供するなど17の目標と169の具体的な「ターゲット」からなる。国家間や各国内での不平等の解消も目標の一つで「誰ひとり取り残さない」が合言葉だ。

 SDGsの採択を受け、ドイツ政府が目標実現のための提言をまとめる中立的な審議会を設置するなど、国際機関や各国政府の取り組みが進んできた。中国も昨年10月にSDGs達成のための国家戦略を発表している。この6月には海の目標達成をテーマにした首脳級の会議が国連本部で開かれる。

 日本も昨年、SDGsの推進本部を設置。「実施指針」をまとめた「健康・長寿の達成」「気候変動対策」など八つの優先課題が示された。これは評価に値するが、指針に盛り込まれた具体的施策も、推進本部自体も、各省庁の寄せ集めの色彩が濃い。

 政治的なリーダーシップも感じられない。企業や地方自治体、市民団体などの関心は徐々に高まりつつあるが、その内容や重要性が社会に行き渡っているとは言い難いのが実情だ。

 SDGs採択の背景には、グローバル化の中で格差が拡大し、多数の「取り残された人々」が生まれたことがある。これが難民やテロ、各国での偏狭なナショナリズムやポピュリズム(大衆迎合主義)の温床となったことが指摘されている。持つ人と持たざる人の格差の解消は、日本をはじめとする先進国、途上国に共通の問題だ。

 SDGsの中には再生可能エネルギーの拡大、漁業資源の回復や密漁の防止、性別を問わないジェンダーの平等など、日本が達成に向けて多大な努力を傾けなければならないターゲットも多い。

 途上国で置き去りにされている人々を貧困や飢餓から救い出すためには、大企業による大規模インフラ建設に傾斜する現在の途上国支援の在り方も抜本的に見直す必要があるだろう。

 先進国の一員として日本には、自らがSDGsの実現に真剣に取り組むとともに、きめ細かい援助によって途上国の目標達成を支援するべきだ。推進本部を明確な権限と責任を持った「司令塔」とし、目標達成に向けた強力な体制を整えてもらいたい。

 SDGsの実現に何より重要なのは、大量生産・大量消費のライフスタイルの見直しだ。そのために、全ての人間や企業が行動を変える必要があるという認識に立ち、変革に取り組む姿勢が求められる。

2017年5月14日 無断転載禁止