大学の地方移転/施策の総動員で成果を

 東京一極集中の是正に関する政府の有識者会議は、東京23区で大学の定員増を認めないとする中間報告をまとめた。来年度予算に反映させるほか、法的な枠組みも検討するという。

 地方から大都市に移るタイミングは高校を卒業して進学や就職をする時と、大学を出て就職する時の2回ある。都会に出る大きな要因は、優れた大学が都会に集中していることと、地方の雇用機会と賃金水準がいずれも低いことにある。

 報告は、東京の大学側に学生数を増やさないよう求める抑制策にとどまった。少子化によって現在約120万人の18歳人口は今後、全国で急速に減っていく。その状況で東京の学生数に上限を設けたとしても、地方の若者の減少が止められる保証はない。

 報告にはいつから抑制するかも明記されず、具体的な方法も今後の検討として先送りされた。一極集中の是正をうたうのであれば、地方での高等教育の底上げや、雇用創出とセットになった実効性のある施策が不可欠だ。

 地方創生を掲げる政府は、東京五輪を開く2020年には東京圏への転入者を抑え、反対に転出者を増やして「転入超過」を解消するとしている。これを実現する目玉策として東京23区からの本社機能の移転を促す税制優遇などを導入した。

 だが、この2年間で移った企業はあまりなく、東京圏に本社を移す企業の数の方が大幅に上回った。16年の転入超過は11万7868人に上る。政府は目標を達成するため施策の上乗せを迫られているのが現状だ。

 しかし、報告には危機感が乏しい。地方での雇用創出策は、既存の取り組みを中心に紹介し、今後、官民で対策を強化すると述べている程度である。

 目標を達成するには、地方に雇用を移すことが重要だ。まず国が政府関係機関の移転を率先して行うのは言うまでもない。京都に移る文化庁に加えて、目に見える成果を積み上げるべきである。

 企業の本社機能の移転は難しいとしても、職住近接の方が効率的な職種や東京になくても機能する職種については、サテライトオフィスをつくり地方に移すことを促すべきである。地方にある中核企業を伸ばすことも急がなければならない。

 その上で、地方大学と産業界の連携を強め、相乗効果を生み出す必要がある。地方で人材を確保することは、経済的に困窮度が増す学生の負担を減らすことにつながる。奨学金の返還を自治体が支援したりする例もある。これら若者が地方を選び、住み続けられるための施策の総動員が待たれている。

 東京の大学側には、地方に大学のサテライトキャンパスを置くなど、東京と地方との学生の交流を活発化させてほしい。都会の学生が地方の生活を経験することで、地方移住の一つのきっかけになる。

 欧米には大学が中心となった地方都市が多くある。大学が国際的に認められる成果を上げることができれば、世界から学生を集めることができる。優秀な学生が集えば、新たな企業が生まれる可能性も広がる。地方大学の個性的な取り組みを後押しする施策が求められる。

2017年5月13日 無断転載禁止