1~3月期GDP/本格回復につなげたい

 2017年1~3月期の実質国内総生産(GDP)は、前期比で年率換算2・2%増となった。5四半期連続のプラス成長で、緩やかな景気回復が続いている。海外を中心に不安材料はあるが、引き続き輸出が好調な上に個人消費も上向いており、この流れを本格回復につなげたい。

 5期連続のプラス成長は約11年ぶりで、成長率は16年10~12月期の1・4%を上回った。しかしGDPの約6割を占める個人消費は前期比0・4%増と持ち直した半面、設備投資は0・2%増と減速、公共投資は0・1%減。成長に最も寄与したのは2・1%増の輸出だった。内需主導の力強い成長にはまだ遠い。

 日銀は4月の金融政策決定会合で、景気の現状判断を「緩やかな拡大に転じつつある」と上方修正した。「拡大」という表現を盛り込んだのは約9年ぶり。3月の企業短期経済観測調査(短観)も大企業製造業の景況感が2四半期連続で改善している。国内景気に明るさが見えてきたのは間違いない。

 ただ景気拡大の実感は乏しく、先行きも楽観できない。輸出は世界経済の拡大で高い伸びが続いているが、トランプ米政権のロシアとの結託疑惑で不確実性が増している。日米貿易不均衡の是正のために強硬策を打ち出してくる可能性もある。輸出の好調がいつまで続くかは分からない。

 今回、個人消費が横ばいから脱したのは明るい材料だ。生鮮食品の値上がりが収まり、天候不順などもなかったためとみられる。しかし景気を主導する勢いはまだ見られない。3月の2人以上世帯の家計調査でも、1世帯当たりの実質消費支出は13カ月連続で前年同月を下回った。

 企業業績は好調なのに設備投資が大きく減速したことで、内需中心の成長のけん引役は不在と言ってよい状況だ。トランプ政権への不安感が、企業経営者の投資姿勢を慎重にさせていることも考えられる。

 物価は上昇の気配が見られる。3月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く)は前年同月と比べて0・2%上昇した。しかし食料などの値上がりは消費者の節約志向を強めてしまい、もろ刃の剣だ。

 日本経済の現状で最も問題なのは、雇用の改善が続き、人手不足が強まっているのに賃金が伸び悩んでいることだ。3月の完全失業率は2・8%と約22年ぶりの低水準が続く。しかし3月の毎月勤労統計調査によると、1人当たりの現金給与総額(名目賃金)は前年同月比で10カ月ぶりに減少した。給与が上がらないことが消費低迷の大きな原因とみられる。

 失業率の低下が大幅な賃金上昇につながらないのは、働きたい人がすべて雇用される完全雇用がまだ実現しておらず、失業率に低下の余地があることを示している。日銀や内閣府はかつて完全雇用失業率を3%台半ばと推計していたが、今は2%台半ばと推計する経済学者もいる。

 政府と日銀が今後、追求すべき目標は、失業率を一段と低下させ、完全雇用を実現することだ。その状態に達すれば賃金は上昇し、消費の拡大から物価上昇という前向きの循環がつくられる。完全雇用が実現したと早合点して政策を変更するような過ちは避けなければならない。

2017年5月19日 無断転載禁止