「暗黒時代」の再考

 最近、島根県西部の中学校で子どもたちがスマートフォンの通信アプリでハングルを使い、メッセージをやりとりしているという、教諭と保護者の嘆きを相次いで聞いた▼先生や保護者に見せたくない内緒話を日本語読みのままハングルで打ち込む。韓流スターの人気が根強く、自然とハングルを身に付けたというが、言語の勝手な融合は、長い歴史が育んだ互いの文化に、悪影響を与えるだけではないだろうか▼一方で、相手の文化を深く理解する大切さを肌身で感じた出来事があった。今年3月、高速道路の取材で韓国・建設部(現国土交通部)で要職を務めた金儀遠(キムウィオン)さんの自宅を訪ねた際、一言目に自然な日本語で「何が聞きたいのか、言ってみなさい」と切り出され、1時間以上も通訳なしで話を聞いた▼86歳の金さんは戦前に日本語教育を受けた世代。書斎は和書で埋まり、特に月刊誌の文芸春秋は、数十年前から定期購読しており、金さんは「日本人よりも愛読者かもしれない」と誇らしげに語った▼韓国の高速道は米国の影響が強いのではないかという予想は外れ、金さんは「近くの日本が一番合っていた」と明かした。金さんだけが親日家というわけではない。戦前を生きた複数の韓国人に会って話をした経験があるが、日本の文化に郷愁を覚える人が少なからずいた▼韓国に革新系の新政権が誕生し、再び歴史問題が日韓関係を阻んでいる。未来志向を語る前に「暗黒時代」と称される戦前戦中の日本と朝鮮半島を見つめ直したい。(釜)

2017年5月20日 無断転載禁止