雷おやじの教え

 先日、出雲大社で最近見かけなくなった「雷おやじ」に出くわした。行儀の悪い子どもを大声で叱ったおじさんだった▼「こらっ」とどすの利いた怒号がして振り向くと、4歳くらいの男の子がおみくじが結んである棚に手足をかけていた。観光客だろうか、高齢の男女。男性の方が「みんなの思いが結んであるところにのぼるんじゃない。お父さん、お母さんに謝りなさい」と続けた▼びっくり顔の男の子は、地面に下りて母親の顔を見上げ、「ごめんなさい」と言うと安心したのか、大声をあげて泣きだした。若い母親も驚いたのか、「大丈夫、大丈夫」と泣き続ける男の子の背中をさするだけ。男性は一連のやりとりの後、その場を離れた▼例祭の最中で、参拝客が大勢いる前の出来事だったが、不快な気持ちにならなかった。怒鳴った理由が理不尽ではなかったし、親の顔を立てた叱り方にも感心できたからだ▼優しく注意する方法もあり、賛否両論はあるだろう。わが子を叱らない親が増えたとも言われる中、男の子にとって見ず知らずの大人に雷を落とされたことは貴重な経験になったのではないか▼全国の神社や寺に落書きをしたり、油のような液体をまいたりするニュースが続くが、心を洗い、祈りの場である寺社での振る舞いは、子どものうちに身に付けるべき作法だ。雷おやじの行動に、「注意は親の仕事」と見て見ぬふりをするわが身を反省。口うるさいだけのおばさんにはなりたくないが、注意できる大人でありたい。(衣)

2017年5月21日 無断転載禁止