キスの効き目

 きのうは「キスの日」だったらしい。魚ではなく、口づけの方。1946年の5月23日、邦画初のキスシーンが登場する映画が封切られたのにちなむという。だからといって、「きょうぐらいは」とはならないが▼キスシーンが登場する有名な物語の一つが「白雪姫」。魔法の鏡に向かい「この世で一番美しいのは誰?」と尋ねるのが習慣の美しい王妃が、娘の白雪姫に一番の座を奪われて嫉妬し、毒リンゴを食べさせて殺す、ひどい話だ。王子のキスで姫は生き返り、二人は結婚して幸せに暮らす▼ひどい話と言えば、昨年の米大統領選でトランプ陣営とロシア政府が結託したとされる疑惑「ロシアゲート」を巡る、トランプ氏のやり方は目に余る。疑惑を捜査するFBIの長官を解任。捜査中止要請に、首を縦に振らなかったかららしい▼事実なら、憲法で厳格に規定されている司法の独立を、自らの保身のために、ないがしろにする異常事態だ。大統領の座を脅かす者を、手段を選ばずに退場させようとしたのか。白雪姫の王妃と同じだ▼米国は捨てたものではない。司法省が長官解任に対抗して、ロ疑惑捜査の特別検察官に元FBI長官を任命した。今後、捜査が本格化する。同省の乾坤一擲(けんこんいってき)のキスで、司法の独立が息を吹き返した▼トランプ氏は「米国史上最大の魔女狩り」と同省を批判した。天につばする発言に、支持率はまた下がった。立憲民主主義は米国の誇り。司法省のキスで、トランプ支持派の良心も目を覚ましたかもしれない。(杉)

2017年5月24日 無断転載禁止