共謀罪議論/速やかに反論の公表を

 共謀罪の構成要件を取り込み「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案を巡り、衆院通過を前に国連特別報告者が政府に書簡を送り「深刻な欠陥のある法案をこれだけ拙速に押し通すことは絶対に正当化できない」と強く批判した。

 菅義偉官房長官は書簡はあくまで「個人の調査」であるとし、「内容は明らかに不適切」と抗議、「国連の立場を反映するものではない」とするが、思わぬところから批判が飛び込んできたことに政府はいらだちを隠せない状況も生まれている。

 一般人が適用対象になる恐れがあるとし、「監視社会」を招くと訴える野党の反対を押し切り、与党は今国会中の成立を目指すが、政府は書簡に対して速やかに反論を取りまとめるとともに、公表すべきだろう。

 特別報告者は国連人権理事会に任命され、あくまで個人の資格で表現の自由やテロリズム、貧困、女性差別など、さまざまなテーマに関わる各地の人権状況の調査を行っている。書簡で懸念されたのは「プライバシーや表現の自由の制約」は、政府がこれまで多くを語っていない点でもある。

 共同通信世論調査では77・2%もの人が「政府の説明が十分だと思わない」と回答している。それも踏まえ、国民の納得が得られるよう詳細かつ丁寧な反論を望みたい。

 書簡を送ったのは、ケナタッチ国連特別報告者。国連によると、特別報告者は「人権擁護の最前線」に立つ専門家で「特定の国における人権状況や世界的な人権侵害について調査、監視し、公表する」立場だという。

 最初の書簡は18日付で安倍晋三首相宛てだった。法案にある「計画」や「準備行為」のあいまいさなどの「欠陥」を指摘した。

 政府が外務省を通じ抗議すると、今度は「法案の欠陥に一つも向き合っていない」、「法案やその他の法律のどこに、プライバシー権の保護と救済が含まれているか示してほしい」とする22日付の書簡が送られてきた。

 犯罪が実行され被害が生じる前の計画段階で罰するにはプライバシーに踏み込み「内心」を探ることが必要。適用対象の「組織的犯罪集団」の周辺関係者が通報することもあるかもしれないが、多くの場合は監視により捜査の端緒をつかむことになろう。

 野党側から、LINE(ライン)やメールもチェックされ、人権侵害につながると追及されると、金田勝年法相は「通信傍受法の対象犯罪ではなく、対象に追加する法改正も予定していない」とし「リアルタイムで監視できない」と答弁。一般人が捜査対象になるとの指摘には「犯罪集団と関わらない一般人は捜査対象とならない」と説明した。

 傍受対象の拡大について、法相は「検討すべき課題」としていた当初の答弁を修正したが、警察内には期待する声が根強い。一般人を巡って政府は、正当な活動をしている団体でも目的が一変して犯罪集団とみなされた場合、メンバーはもはや一般人ではないと説明している。

 国内外からの疑問に答えるために、これまで繰り返してきた説明の焼き直しにとどまらず、しっかりとした反論を組み立てるべきだ。

2017年5月26日 無断転載禁止