ボクシングの判定/ビデオでの確認が必要だ

 ロンドン五輪金メダルの村田諒太選手がフランスのエンダム選手と対戦し、判定負けとなった世界ボクシング協会(WBA)ミドル級王座決定戦は判定が間違っていたとWBAが事実上認めた。WBAは両者の再戦を命じ、エンダム選手の優勢と判定したジャッジ2人については6カ月間の資格停止処分を発表した。

 村田陣営は5月20日の王座決定戦で相手から1度ダウンを奪う一方、防御を固めてパンチを防ぎ、相手の有効打はほとんどなかったと主張していた。

 ジャッジ1人が7点差で村田選手の優勢と判定したのに対し、他の2人はそれぞれ5点差、3点差でエンダム選手の勝ちと判定した。プロボクシングはジャッジによって、こんなにも判断が分かれるのかと驚いたスポーツファンも多かったのではないか。

 試合後間もなくしてWBAの会長がツイッターに、自分の採点では村田選手が7点差で勝っていた、村田選手と日本のファンに謝罪すると書き込んだ。世界タイトル戦の主催団体の会長としては異例の私見表明だった。

 日本ボクシングコミッションは採点結果に抗議し、検証を求めた。それを受けての再戦命令とジャッジの資格停止発表という経過をたどった。

 ジャッジの資格停止は重い処分だ。両選手の攻撃と防御の技術について正確な判断ができなかった技量不足を問う以外に、何らかの意図を確認したためなのだろうか。

 組織の権威が揺らぐ恐れのあるジャッジに対する期限付き資格停止処分にまで踏み込まなければならなかった理由は何だろう。再戦が実現し、再び判定に持ち込まれた場合、今後こそ、その結果発表を信じることができるためにも、WBAは今回の処分理由を明確に説明してほしい。

 プロボクシングは多分にショービジネスだ。主催団体にとって、華やかな舞台をつくり上げ、できる限り多くの収益を上げる努力が重要なことは理解できる。しかし、競技としての信頼はイベントの土台であり、商業的利益に優先するはずだ。判定に疑義が出れば、試合に付属する価値は全て失われてしまう。

 WBAはいったん出た判定を否定し、再戦の実施を命じれば、それで済むという話ではない。結果として不適任だったジャッジを選定した責任がある。

 同じ格闘技でも五輪で実施されているアマチュアスポーツは、判定にビデオ映像などを活用することで、より公正に、より分かりやすいものになってきた。

 例えば柔道では、選手と同じ畳の上に位置する主審が技の有効性を肉眼で判断するだけではなく、複数の審判員が畳の下で映像を見つめている。主審の判断が正しくないと確認すると、畳の下から間髪入れず通知し、それを受けた主審が技の有効性を訂正するシステムが確立した。

 審判の誤った判断によって、自身が不利な状況に陥ったと信じる選手が判定の根拠とされたシーンについて、ビデオ確認を求める「チャレンジ制度」も多くの競技で採用されるようになった。

 プロボクシングは多くの不明瞭な判定が続いている。信頼の確立には、現場ですぐにビデオ検証できるシステムの導入が欠かせない。

2017年5月27日 無断転載禁止