国際テロ対策/結束し不信の壁崩そう

 英国マンチェスターの自爆テロを受け、イタリアで開かれた先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)はテロ対策の強化を誓ったが、過激派組織「イスラム国」(IS)に呼応するテロは各地で続いている。イスラム教のラマダン(断食月)に入っており、一層激化する恐れがある。

 トランプ米大統領が出した入国規制の大統領令など、民族・宗教排斥の動きが過激主義の温床となる不信感を増幅させ、テロ対策の足を引っ張っている。国際社会は不信の壁を崩す努力を結束して進めるべきだ。

 リビア系英国人の男が実行犯とされるマンチェスターの自爆テロは、人気歌手のコンサートの会場という「ソフトターゲット」を狙って無差別に市民を殺傷した卑劣な犯行で、8歳の女の子を含む22人が犠牲となった。G7サミットが、非難する特別の声明を出し「テロと過激主義への対策は優先課題だ」と表明したのは当然だ。

 だが、テロの猛威は止まらず、マンチェスターの事件後もイラク、エジプト、フィリピン、インドネシアで相次いだ。アフガニスタンでも爆発事件が起き、日本人の大使館職員2人がけがをした。

 イラクではISの拠点の北部モスルでイラク軍などの奪還作戦が続く。劣勢とされるISは各地でテロ戦術を強めており、連続爆弾テロで30人以上が死亡した。

 エジプトではキリスト教の一派コプト教徒のバスが襲われ30人前後が死亡。フィリピンでは南部ミンダナオ島で政府軍とISに忠誠を誓う過激派の武力衝突が続き、死者は100人を超えた。ドゥテルテ大統領は同島に戒厳令を出し、訪日も延期する方向だ。

 イスラム教徒人口が世界最多のインドネシアの首都ジャカルタでは、ISに忠誠を誓う過激派の男2人が自爆し、警官3人が死亡した。

 ラマダンはイスラム教の神聖な月で、日の出から日没まで飲食は原則として禁じられる。国や宗派で日付が違う場合があるが、5月27日ごろに始まった。近年ラマダンに大規模テロが多発しており、昨年はバングラデシュでの飲食店襲撃テロで、日本人7人を含む20人が犠牲となった。外務省は海外安全情報で、標的になりやすい場所に近づかないよう注意喚起している。

 トランプ大統領が「テロ対策」と主張し、2度にわたって出したイスラム圏からの入国規制の大統領令は、いずれも連邦高裁で退けられた。入国規制はテロ対策として逆効果にしかならない。

 欧州でも移民排斥を掲げる政治勢力が支持を集め、イスラム教徒に対する憎悪犯罪(ヘイトクライム)が増えていることが憂慮される。

 G7サミットが声明で「テロ撲滅へ市民社会と共同で取り組む」と表明したのは当然だが、具体策には懸念もある。「インターネットのプロバイダーなどが暴力を扇動する内容を自動的に検知する新技術開発を奨励する」と過激主義の拡散防止に民間企業を巻き込むことを打ち出した。

 イスラム社会との壁をそのままにして監視社会を強化するだけでは、テロ対策の目的は達成できず、テロ対策を名目とした人権侵害が横行しかねない。過激主義の温床を広げさせないよう各国が努力することを求めたい。

2017年6月1日 無断転載禁止