共謀罪審議/何をすれば罪になるか

 犯罪の計画を罰する共謀罪の構成要件を取り込み「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案について、参院法務委員会で参考人質疑が行われた。

 法案をめぐり与党は会期延長も視野に今国会中の成立を目指す。対する野党は疑問や懸念を積み上げ、徹底追及により廃案に追い込みたいとしているが、多くの論点が積み残しになっており、政府は誠実に説明を尽くすことが強く求められる。

 政府はこれまで、2020年東京五輪・パラリンピックに向けた「テロ対策」上、国際組織犯罪防止条約(TOC条約)の締結が不可欠で、そのために共謀罪新設が必要と訴えてきた。

 参考人質疑で賛成の立場から、外国から情報を受けられなければ、国内での外国人犯罪者、テロリストの摘発や予防に致命的となるとして国際犯罪対策上の意義を強調する意見が出された。

 一方、反対意見としては、「条約批准に共謀罪は不要で、市民の内心が捜査と処罰の対象となり、市民生活の自由と安全が危機にさらされる」などがあった。

 法案に関しては、賛成側は「構成要件が謙抑的で、処罰範囲を狭めたリベラルなもの」と評価。反対側は「共謀罪のある先進国は、プライバシー保護のための法制が日本より優れている」として、人権侵害の歯止めが不十分だと主張した。

 改正案は犯罪が実行されて初めて処罰するという刑事法の原則を大きく転換させるものだが、肝心の国民の理解は深まっていない。共同通信世論調査では、8割近くの人が「政府の説明が不十分」と考えている。自民、公明両党支持層でも、だいたい7割がそう回答した。

 「一般人は捜査対象にならない」と言うが、「何をすれば罪になるか」という点が、現時点では見えにくい。政府はあいまいな説明に終始してきたこともあり、処罰の前倒しが監視強化につながり、プライバシー権や表現の自由を圧迫するとの懸念は膨らむ。

 政府は当初から、適用対象はテロ組織や暴力団など「組織的犯罪集団」に限定され、下見や資金の用意など「実行準備行為」がないと処罰できないから「一般人が対象になることはあり得ない」と繰り返してきた。

 ただ一連の答弁の中では「嫌疑があれば、もはや一般人ではない」「正当な活動をしている団体でも目的が一変した場合には、犯罪集団とみなされる」とも説明。一般人と捜査対象の間の線引きはあいまいなままだ。

 法務省幹部がオウム真理教を例に取り、組織的犯罪集団か否かをどのように見極めるかについて答弁したが、教祖が殺人を正当化する教義を唱えるようになり、信者が教義の実現を目的に結合していても団体が犯罪集団に一変したと判断するには足りない。かなりの時間と人員をつぎ込んで特定の団体やメンバーを継続的に監視し、情報と証拠を集めることが必要になる。

 具体的に何が準備行為に当たるか、犯罪の合意に至るやりとりをどう入手するか、本当にテロの未然防止に効果があるのか-といった疑問も山積みになっている。一つ一つ丁寧に解消しなければ、国民の理解は得られない。

2017年6月2日 無断転載禁止