天安門事件28年/民主化し自由の拡大を

 中国の学生や市民の民主化要求運動が武力で弾圧された1989年6月4日の天安門事件から28年。中国の人権状況は、習近平国家主席の政治的引き締めにより悪化する一方で、当局は今年も北京に厳戒態勢を敷いて、事件への抗議行動を封じ込める構えだ。

 人権弾圧は、強引な海洋進出などと相まって、中国のイメージを傷つける要因となっている。新興大国として国際社会に歓迎されるためには、対外的な平和主義とともに国内の民主化が不可欠だ。習政権は、強権的な手法ではなく、民主化によって国民の自由の幅を広げることで、国内の安定を図るべきだ。

 天安門事件では、軍の攻撃により多数の学生や市民が殺傷されたが、中国政府は「反革命暴乱」の鎮圧として、正当化してきた。

 事件で子どもを亡くした親の会「天安門の母」は、政府に真相究明や賠償、責任者の処罰を求める声明を発表し「党と政府が虐殺を反省せず、罪を認めないなら中国社会に公正さや公民の権利はない」と指弾した。しかし中国当局は毎年この要求を無視し遺族への監視を続けてきた。

 習国家主席は2013年に就任後、汚職摘発に努める一方で、共産党独裁の堅持のため「国家の安全」を声高に唱え、引き締めを強めた。14年には、新設した国家安全委員会の主席に就任。反スパイ法、国家安全法、反テロ法、外国非政府組織(NGO)国内活動管理法などを次々に制定。今月1日には、言論統制を強化するインターネット安全法を施行した。

 15年7月の国家安全法施行後、当局は人権派弁護士ら約300人を一斉に連行。弁護士らの人権擁護運動を反政府活動と決めつけ、国家政権転覆罪などで処罰した。

 香港の人権団体は、中国の司法当局が昨年1年間に国家政権転覆罪と国家政権転覆扇動罪で処理した案件は約3千件に上り、文革後で最も厳しい言論弾圧だと伝えた。

 中国最高人民検察院の曹建明検察長(検事総長)は今年3月に発表した活動報告で、著名な人権派弁護士や民主活動家を名指しして「敵対勢力による転覆、破壊活動を厳しく処罰していく」との強硬方針を示した。

 当局はスパイ防止にも力を入れ、15~16年、スパイ行為に関与したとして日本人5人を相次いで拘束。最近、地質調査会社の社員ら日本人7人が拘束されていたことも分かった。日本にとっても対岸の火事ではない。

 習氏は昨年10月、公式に党中央の「核心」と位置付けられ、権力基盤を強化。今年後半には5年に1度の党大会が開かれ、党総書記2期目がスタートする。習氏は政治的に敏感な時期を強硬姿勢で乗り切る構えだ。

 しかし国民の間には、貧富の差の拡大や特権官僚、経済成長の減速、環境破壊などへの不満が根強い。今や多くの国民は海外旅行や留学を経験し、ネットでも国外の様子が分かる。多様な意見を強権で封じ込めるのは難しい。

 習氏は、現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」の国際会議で「決して他国の内政に干渉せず、社会制度や発展モデルを押し付けない」と平和主義を強調した。こうした「寛容さ」を国内でも体現して民主化を進めるべきだ。

2017年6月4日 無断転載禁止