こども保険と給与明細

 社会に出てから職業訓練するより幼児教育を充実させた方が人的投資として効果が大きい-ノーベル経済学賞を受賞した米国の経済学者がこんな子育て論を提唱している。幼少期の芽を大事に育てることが、将来豊かな実りをもたらすデータを長期間の追跡調査で実証した▼その研究にヒントを得たのか、政府・自民党内で「こども保険」を創設する構想が進められている。保育・幼児教育を無償化するための財源を社会保険料に上乗せして確保する。大学など高等教育を含む教育無償化の財源を借金で賄う教育国債の案もあり、子どもを増やすため教育費の負担軽減を巡るアイデアが競い合う▼こども保険は働く世代全員が保険料を負担するが、国から給付金を受け取るのは未就学児を持つ世帯に限られる。幼児がいない世帯を中心に不公平感が残り、教育国債も将来世代に借金のつけを回すと指摘される▼こども保険では負担に見合う「お返し」をどう保証するかという負担のしがいが肝となるのではないか。保険料を負担しながら、制度の恩恵を受けられなかった人たちに将来受け取る年金を上乗せ支給し、負担しっぱなし感を解消する方法もある▼保険効果によって子どもが増えれば年金財政を支える現役世代が将来増え、上乗せ財源を確保できるかもしれない▼少しずつオカネを出し合って、社会で子どもを育てる社会保障の新たな仲間をつくるべきか。税金と社会保険料を差し引かれた給与明細の手取り額と相談しながら、考えている。(前)

2017年6月3日 無断転載禁止