雇用改善/失業率にまだ低下の余地

 雇用状況の改善が続いている。有効求人倍率はバブル期のピークを超え、完全失業率も大きく下がっている。しかし賃金が十分に上昇していないことを見れば、現状は完全雇用ではなく、失業率にはさらに低下の余地があると考えるべきではないか。

 有効求人倍率は、4月に1・48倍に上昇。バブル経済時で最高だった1・46倍を上回り、1974年2月の1・53倍以来の高水準となった。4月の完全失業率は3カ月連続の2・8%で、約22年ぶりの低水準を維持している。

 大学生と高校生の就職率も大きく改善している。厚生労働省と文部科学省の調査では、今春、大学を卒業し、就職を希望した人の4月1日時点の就職率は97・6%で、統計を開始した97年春卒以来最高。高校生を対象とする文科省の調査でも、3月末時点の就職率は98・0%で、7年連続の増加となった。

 こうした雇用改善の主な原因は人口減少であり、見掛けだけの改善にすぎないという見方があるが、的外れだ。労働力となる年齢層の人口は減少が続いているにもかかわらず、就業者数も企業の求人数も大きく増加しているからだ。特に2016年度平均の求人数は約257万人と、統計開始以来最多となった。

 15~64歳の生産年齢人口は1997年がピークで、98年から減少に転じたが、93年から2000年代前半にかけてと、08年のリーマン・ショック後の2回、「就職氷河期」があった。反対に高度成長期は生産年齢人口の増加が続いていたが、失業率は低く、新卒者の就職率は高かった。

 人口減少に伴う労働供給の縮小は確かに最近の雇用改善の一因ではあるが、最も大きな原因は緩やかな景気上昇により労働需要が拡大していることだ。安倍政権の経済運営が、雇用に関して大きな成果を上げていることは事実だろう。

 しかし雇用が改善して人手不足が強まっているにもかかわらず、賃金は伸び悩み、その結果、個人消費も低迷している。これがデフレの完全脱却が実現しない大きな理由とみられる。

 賃金がなかなか上がらない原因については、給料が安いパートやアルバイトなど非正規雇用の割合が上昇していることをはじめ、さまざまな説明がある。しかし一番の原因は、働きたい人が職種のミスマッチなどを除いて全て雇用される完全雇用が、まだ達成できていないのだろう。

 かつて失業率が4%近かった時期に「ほぼ完全雇用」とみる当局者や専門家がいたが、そうした見方が誤っていたことは明らかになった。最近は、これ以上下がらない構造失業率を2%台半ばとする推計が支持を広げている。政府と日銀は当分の間、雇用改善と賃金上昇の好循環に向けて、もう一段の失業率の低下を目指すべきだ。

 もちろん、深刻な人手不足の影響にも十分に目配りをしたい。人手不足には労働条件の改善をもたらすプラス面もあるが、供給力の制約が日本経済の成長力の足かせになる懸念がある。

 企業は、これまでにも増して省力化投資や労働生産性の向上に努める必要がある。政府にはそうした企業を支援する施策の拡充を図るよう求めたい。

2017年6月6日 無断転載禁止