アキのKEIルポ2017 激しい頭脳バトル マリーの返球に意図

 「僕、本当に記憶力が悪いんで…」

 恥ずかしそうに口にしたその言葉に、満席の会見室から一斉に笑い声が噴き上がった。英国人記者の「全米でのアンディ(マリー)との対戦で印象に残っていることは?」と問われた時。「結果すら良く覚えてなくて。僕、勝ったんだっけ?」。そんな錦織の反応には、英国人記者も笑顔で質問を切り上げるしかなかった。

 この錦織の発言が、果たして本当か否かは分からない(彼は本当にスパッと忘れてしまっていることがあるので、個人的には本当だったのではと思う)。それでもマリーもまた、ツアーの中で錦織を成長させてくれた一人であることは間違いない。

 「彼の組み立て方は天才的」。かつて錦織はマリーをそう評し、一つのお手本としていると言った。一見、何気なく返しているような打球でも、マリーのショットには必ず意図がある。その意図を解析しながらの激しい頭脳バトルが、二人の対戦の醍醐味(だいごみ)だ。

 会見の席ではとっさに思い出せなくとも、錦織が全米での勝利を忘れるはずがない。それはもちろん、マリーも同様。何しろ彼のチームはホークアイ社からデータを購入し、対戦相手を徹底的に分析することで有名だ。

 ともにコート上の戦略家として知られる二人の戦いは、その背後に控えるスタッフたちの作戦立案も含めた総力戦となる。

 (フリーライター・内田暁)

2017年6月7日 無断転載禁止