横行する違法漁業/根絶へ向け対策の強化を

 資源量が極端に減り、絶滅危惧種とされるまでになった太平洋クロマグロの規制を無視した漁獲が、国内で相次いで発覚した。このほか、ウナギの稚魚「シラスウナギ」やナマコ、アワビなどの密漁の摘発も多く、その数は増加傾向にあるとされている。

 法律や規制を無視する漁業は「違法・無報告・無規制(IUU)漁業」と呼ばれ、その根絶が国際的な課題になっている。日本は先月、IUU防止のための国連食糧農業機関(FAO)の国際協定を批准したばかりだ。水産物の大消費国、主要漁業国として、IUU漁業の根絶に一層の力を入れねばならない。

 国内のクロマグロの漁獲量は、水産庁が国際資源管理機関の中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)での合意に基づき、30キロ未満の未成魚の漁獲枠を4007トン以内とするなどの漁獲規制を導入、海域や漁法ごとに枠を設けて漁業者に順守を求めていた。

 だが、昨年、長崎県で許可を得ていない漁業者による漁獲が、三重県では水産庁の漁業自粛要請を無視した操業が横行していたことが発覚。その後の調査で静岡、和歌山など延べ12県で、無許可漁業や、漁獲量の無報告などがあったことが分かった。その量は計132トンを超える。マグロ漁関係者によれば、これは氷山の一角だという。

 IUUマグロ漁業が一因となって今年の未成魚の漁獲は定められた枠を守ることができず、超過分を来年の漁獲量から差し引くことになった。

 太平洋クロマグロの最大の漁獲国である日本の資源管理の不十分さには各国から厳しい目が向けられ、今回の日本のクロマグロIUUが国際的な問題となる可能性もある。

 IUU漁業が横行しているのは日本だけではない。FAOによると、世界のIUUによる漁獲量は最大で年間2600万トンに上る。金額では最大235億ドル(約2兆6千億円)にもなり、1兆5千億円規模の日本の年間漁業生産額よりも多い。

 FAO加盟国はIUU根絶のため「違法漁業防止寄港国措置協定」という国際協定をまとめ、欧州連合(EU)や米国の批准によって昨年、発効した。日本の批准は遅れたが先月ようやく批准にこぎ着け、防止対策で各国と歩調を合わせることになった。

 協定批准に際し、米国はIUUのリスクが高いマグロやアワビなどについて、それが合法的にとられたものであることを業者が証明することを義務づける制度の導入を決定。EUも漁獲証明書の添付を義務づけることにした。

 日本で密漁が横行するのは、多くの場合に漁業規制や漁獲量の報告が漁業者の自主的な取り組みに任されており、仮に密漁が発覚したとしても罰金などの罰則が軽いことが一因だと指摘されている。

 国内の漁業者による密漁から、その水産物の輸出、海外で違法に漁獲されたものが日本の市場に持ち込まれることなど、日本の水産物市場が抱えるIUUのリスクは非常に大きく、それに対応した法制度は不十分だ。

 協定批准を機に、欧米に引けを取らない法制度を整備し、実行に移さないと「日本が国際的なIUU対策の効果を弱めている」との批判を浴びかねない。

2017年6月8日 無断転載禁止