黄金と異国船

 先週、仕事で福岡に行き地元新聞を読むと、「金塊をめぐる事件」で1面が埋まっていた。佐賀県唐津沖では10億円の金塊を積んだ密輸船が捕まった。中国ルートの東シナ海受け渡しだ▼昨年博多で起きた7億5千万円の金塊盗難も急展開。名古屋の男ら10人が逮捕され、犯行グループへの警察の情報漏えいも明るみに。1億3千万円の金塊を身につけて運んだ韓国からの女密輸団が中部空港で逮捕された記事もあった▼アジアの闇ルートで、金が日本を目指している様相。ミサイルを乱発する北朝鮮に米空母がにらみを利かせる「緊張の日本海」をまたぎ、空路、海路で金が大陸から逃げ出しているような錯覚にとらわれる▼頭をよぎる黄金幻想はさておき、現実の博多港もいわばドル箱、黄金の港だ。巨大クルーズ船が連日寄港し、迎えのバスは長蛇の列。外国人来訪(インバウンド)はこの4年で3倍に増え、1人平均10万円を消費する▼日中韓3カ国を4、5泊で回る「アジアで最も人気のある海域」となった海上ルートを地図で見ると、時間距離的に東は山陰地方がぎりぎり入る。流れを山陰にも呼び込めないかと思う▼クルーズターミナルの目前には、古代海上交易の出発点・志賀島(しかのしま)が見える。「漢委奴國王(かんのわのなのこくおう)」の金印が出土した島で、鎌倉時代の元寇(げんこう)では異国船が湾を覆い尽くした。黄金と異国船。アジアの玄関都市を自称する福岡は、歴史的なつながりを蘇(よみがえ)らせた。さまざまな大陸文化を受け入れた山陰地方でも、それは不可能ではない。(裕)

2017年6月8日 無断転載禁止