国連と日本政府/懸念解消につなげたい

 言論と表現の自由に関する国連特別報告者であるデービッド・ケイ氏は12日の国連人権理事会で演説し、日本の報道の自由に関して「放送法には放送局規制の権限がある。世界的には独立的な規制が標準で、その方向に向かった方がいい」などと、政府が放送局に電波停止を命じる根拠となっている放送法4条の廃止を勧告した。

 また、防衛、外交、スパイ防止、テロ防止の4分野での厳重な情報保全を図る特定秘密保護法についても懸念を示した。

 これに対して伊原純一駐ジュネーブ国際機関政府代表部大使は、その場で「わが国の説明や立場に正確な理解のないまま記述されている点があることは遺憾だ」と反論。13日には菅義偉官房長官が記者会見で「報道の自由は最大限尊重している。不当に圧力をかけたことはない」と指摘を否定した。しかし「否定」一辺倒の反論で問題は解決するのだろうか。

 ケイ氏は5月30日に公表した対日調査報告書でも、放送法に関して「政府当局者の直接・間接のメディアへの圧力が報告され、独立性に懸念がある」と記述。特定秘密保護法にも「知る権利の範囲を狭めている」として「安全保障上問題がなく一般市民の関心のある情報については開示しても処罰されないよう例外規定を設けるべきだ」と提案している。

 日本政府の対応は報告書が公表されたときから内容を否定する形で一貫している。しかしケイ氏の主張は独自なものではなく、日本国内でも全く同じ指摘がなされている。そのような状況を放置したまま反論しても、懸念が拭い去られることはないだろう。むしろ国連側と日本政府の溝を深めるだけではないだろうか。

 同様のことは国会で審議中の「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案を巡っても起きている。プライバシーの権利に関する国連特別報告者のジョセフ・ケナタッチ氏が「プライバシーや表現の自由を制約する恐れがある」との公開書簡を5月中旬、安倍晋三首相に送った。

 外務省は、即座に国際組織犯罪防止条約を締結するための法整備であると強調するとともに、「海外にて断片的に得た情報のみをもってこのような懸念を示すことは、日本の国内事情や『テロ等準備罪』の内容を全く踏まえておらず、明らかにバランスを欠いており、不適切である」とする見解をホームページで発表した。

 その後、安倍首相も国会で「著しくバランスを欠く不適切なものだ」と批判、国連のグテレス事務総長がケナタッチ氏について「国連とは別の個人の資格で活動しており、主張は必ずしも国連の総意を反映するものではない」と述べたと明らかにし、公的な資格を否定した。

 犯罪を計画段階で処罰する改正案に対するケナタッチ氏の指摘は今、国会審議の争点になっている。その意味では、むしろ日本の国内事情を踏まえているとも言えよう。

 相手が誰であっても間違いや一方的な主張には反論すべきだ。しかし、一方でケイ氏やケナタッチ氏の主張にも耳を傾ける姿勢も必要だろう。それが国民の懸念を解消することにつながるはずだ。

2017年6月14日 無断転載禁止