共謀罪法成立/運用には十分な説明を

 犯罪の計画を罰する共謀罪の構成要件を取り込み「テロ等準備罪」を新設する改正組織犯罪処罰法が15日の参院本会議で可決、成立した。与党は強引に衆院通過をはかったのに続き、参院では「中間報告」という異例の手続きを取り、法務委員会採決を省略して本会議採決に持ち込んだ。国民に残る不安や疑問を払しょくするため、運用面では政府は今後も十分な説明を尽くしてほしい。

 中間報告の根拠は国会法にあり「特に必要があるとき」に認められる。一方で、審議の打ち切りにより議会制民主主義の否定につながりかねない「禁じ手」とされてきた。法案審議とは別に、加計学園問題を巡る野党の激しい追及に対して、政府の対応は後手に回っていたため、国会を閉じることを最優先した対応と取られかねない。

 改正組織犯罪処罰法は、「テロ対策」のために必要だと説明してきた。国際協調でテロを封じ込めるため、とするその本来的な目的は理解できる。同時に犯罪が実行されて初めて罰するという刑事法の原則の大転換となり、一気に277の罪で共謀・計画が処罰の対象となる。そうした「内心」の領域を探るため、警察は団体や個人に対する監視を一層強めるのではないかという不安はつきまとう。

 社会の隅々に監視が及び、プライバシーが脅かされ、言論・表現の自由が後退するようなことがあってはならない。

 今回の法案審議では政府側の対応のまずさが目立った。5月の参院法務委員会で、民進党の質問に対して答弁に立とうとした金田勝年法相を隣にいた安倍晋三首相が慌てて押しとどめ、政府参考人の法務省刑事局長が答えた。金田法相の答弁は質問とかみ合わないことが多かった上に、法案の中身を理解していないのではないかと思わせる場面もあり、たびたび野党の追及の的になっていた。

 所管大臣がまともに説明できないことで不安が増した。官僚の答弁で取り繕うのではなく、政府としてしっかりした説明をすべきだった。

 また、テロ組織や暴力団などの「組織的犯罪集団」の構成員らが重大な犯罪を計画し、資金を用意したり下見をしたりする「実行準備行為」に取り掛かれば処罰すると改正法にはある。当初、これをもって政府は適用の対象が限定され、準備行為がないと処罰されないから「一般人が対象になることはない」と強調した。

 これに対しても審議が進むにつれ、正当な活動をしている団体が犯罪集団に一変することもあるとした上で「嫌疑があれば、もはや一般人ではない」とも説明。構成員ではない「周辺者」が処罰される可能性にまで言及した。犯罪集団と正当な団体、構成員と一般人という線引きはあいまいになり、誰が何をすれば罪に問われるかなど、重要な部分は分かりにくい。

 さらに監視強化が社会に重くのしかかる。電話やメールの内容をチェックする通信傍受の対象犯罪拡大や新たな捜査手法の導入の検討が加速することになろう。民主主義の根幹を成す自由に物を言える権利を奪われないために何をすべきか、何ができるかを市民がそれぞれの立場で、じっくり考える必要がある。

2017年6月16日 無断転載禁止