夢と生存本能

 若手経営者に話を聞く機会があった。地方の人手不足は深刻な上、自分たちより若い世代の職業観に戸惑っていた。働くことに総じて淡泊。歳(とし)が近く「物より心の豊かさを選ぶ生き方」にも共感できる分、対応が難しい▼ある経営者は「自分が若い時、欲しいもののために業種を選ばずアルバイトを掛け持ちした」。しかし今、「特に欲しいものはないので取りあえず休みをください」と言われ処置なしだ。変化の少ないゼロ成長時代。食うために働く感覚も持ちにくい▼職に就かない若者は増え、就職後の離職も多い。日本の15~29歳のうち仕事にも学校にも行かないいわゆるニートは10%、170万人。その3分の1は大卒で、就職難の欧州と異なり、えり好みしなければ引く手あまたの「高学歴ニート」が多いのが特徴だ▼まさに学歴神話の崩壊。確かに中・高卒者を企業内で大切に育てた古き良き日本型経営と労働文化は崩れ、手っ取り早く非正規雇用し、不況になれば切り捨てる風潮も目立つ。「企業は若者を大切にしてくれない」という感覚が広がったのかもしれない▼企業の中でじっくり成長し、豊かさの足場を得ることは悪いことではない。今は確かに学生の売り手市場だが、就職氷河期は突然来る。むしろ好調な時は短く、冷え込みは悪い風邪をこじらせたように長引く▼労働は夢をかなえる期待感と生存本能が訴える危機感の二本足で立つもの。歴史は繰り返す。説教じみて嫌われようとも、若者に語り続けるしかないようだ。(裕)

2017年6月20日 無断転載禁止