命を守る道を

 宙を舞う車が観光バスに衝突した。今月10日に愛知県新城市の東名高速道路で乗用車が中央分離帯を越えて観光バスに衝突した事故では、バスのドライブレコーダーに残された映像に息をのんだ▼事故で乗用車の男性が死亡し、バス乗員乗客45人が重軽傷を負った。運転歴48年の運転手は瞬時にハンドルを左に切り、真正面からの衝突を避けた。バスガイドも3度にわたって乗客にシートベルト着用を呼び掛けていた▼安全への執念が奇跡を起こしたが、中央分離帯のない片側1車線(暫定2車線)が9割を占める山陰の高速道路で奇跡は望めない。時速70キロの法定速度でシートベルトを着用していても、1車線では逃げ場がないからだ▼暫定2車線の区間は、事故に遭遇する確率や死亡事故率が高い。会計検査院によると2005年から10年間、中央分離帯のある高速道路で対向車線にはみ出す事故は30件発生し、死者は3人。暫定2車線では2208件、死者119人と桁違いのリスクが存在する▼国と高速道路各社は今春から試行的に一部区間へワイヤロープ式防護柵を設置した。5月末には浜田市佐野町の中国横断自動車道広島浜田線で防護柵がトラックのはみ出しを防いだ。全国では10件のはみ出し事故を防ぎ、死者は出ていない▼防護柵は設置早々に明確な事故抑止効果を示している。国は冬期データを得るため本年度末まで検証を続け、方針を決めるという。不条理なもらい事故を防ぐため、一刻も早く全線設置を押し進めるべきだ。(釜)

2017年6月21日 無断転載禁止