藤井四段の活躍/新しい世代の活躍に期待

 プロデビュー以来、無敗の最年少棋士、藤井聡太四段の快進撃で将棋ブームが起きている。トップ棋士がコンピューターにかなわない時代に入ったが、人間同士の対局の魅力は失われず、多くの人の心を動かすことを示した意義は大きい。

 人工知能(AI)やロボット技術の発達によって人間が仕事を奪われる未来が予測されているが、将棋ソフトを使った研究やネット対局で力をつけ、人間らしいドラマを見せてくれる新しい世代の活躍を、将棋ファンならずとも参考にしたい。

 藤井四段は中学生でプロ入りした史上5人目の棋士だ。加藤一二三・九段が持っていたプロ入り最年少記録を62年ぶりに塗り替えた上、その加藤九段を破ってデビュー戦を飾った。デビュー後の連勝記録だった10連勝を書き換え続け、連勝記録の最多タイの28連勝を達成した。

 1人の棋士の活躍がこれほど話題をさらうのは、羽生善治3冠が、1996年に初の7冠同時制覇を果たして以来だろう。当時と比べ、情報技術の発達で将棋を取り巻く状況は大きく変わった。

 ネット対局の普及で、遠隔地にいる相手と容易に対局できるようになった。またソフトが発達し、人間は歯が立たなくなった。棋士の存在意義を問う声が出る一方、積極的にソフトを研究に活用する棋士も多い。

 藤井四段の心理面の安定ぶりには驚嘆する人が多い。「記録は意識せず、自然体で指す」と繰り返し話しているが、なかなかできないことだ。本人の性格や努力によるのだろうが、ソフトの活用によって集中力が鍛えられる面があるのかもしれない。

 将棋ソフトが現役のプロ棋士に初めて勝ったのは2013年。その後、着実に強くなり、人間に対する優位が確定したのは今年4月~5月に行われた佐藤天彦名人とソフト「PONANZA(ポナンザ)」の2番勝負だ。将棋界で最も伝統のある名人が完敗し、将棋ファンからは落胆のため息が漏れた。

 昨年来、将棋界はソフト不正使用疑惑で揺れてきた。三浦弘行九段が対局中のソフト使用を疑われ、出場停止処分を受けたが、その後の調査で不正はないと認められた。この問題で暗雲が垂れこめた将棋界にとって、藤井四段の活躍は願ってもない光明となっている。

 囲碁は将棋に比べ、強いソフトの作成がはるかに困難で、トップ棋士が負けるのは遠い将来だと長年いわれていたが、やはり人間の敗北が確定した。今年5月下旬、世界最強とされる中国人棋士と米グーグル傘下のAI開発ベンチャーの囲碁ソフト「アルファ碁」が対決した3番勝負で、ソフトが圧勝した。

 6冠を保持する日本の囲碁界トップの井山裕太碁聖は、人間同士の対局について「心理面が影響するからこそ、極限の状態で下す人間の判断に、ミスを含めて心が揺さぶられる。今後もその価値が下がるとは思わない」と話していたが、それを藤井四段は示してくれているようだ。

 囲碁界でも井山碁聖を追う若い棋士たちが台頭してきている。新しい世代の棋士たちが、どのようなドラマを見せてくれるのか。期待して見守りたい。

2017年6月23日 無断転載禁止