加計文書再調査/徹底的な検証が必要だ

 岡山の学校法人「加計学園」の獣医学部新設を巡り「総理のご意向」などと記録した文書が明るみに出た問題で、松野博一文部科学相は再調査を表明した。文書は内閣府との協議内容などを文科省側で書き留めた形になっているが、松野文科相は5月に「存在を確認できない」とする調査結果を公表。野党が求める再調査を拒否していた。

 しかし今年1月まで文科事務次官だった前川喜平氏が記者会見して「文書は本物」と断言。報道機関の取材に文科省の現役職員たちからも「省内で共有していた」などの証言が相次ぎ、世論の反発が高まった。このため安倍晋三首相や菅義偉官房長官らが対応を協議し、方針転換せざるを得ないと判断したようだ。

 遅きに失した感はあるが、きちんと省内を調べれば文書は出てくるだろう。問題はその後だ。国家戦略特区制度の下で、安倍首相の友人が理事長を務める学校法人が獣医学部新設の事業者に選定されるまでの過程で特別扱いされたり、行政がゆがめられたりすることはなかったかを徹底的に検証する必要がある。

 証人喚問に応じる意向を示している前川氏はもとより、文科省や内閣府など関係府省で特区制度に関わった担当幹部らを国会に呼び、詳細な証言を積み上げるべきだろう。その上で「行政がゆがめられたことはない」との政府の主張が信用に値するかを国民が判断すればいい。

 加計学園問題で政府の対応は不誠実だと言われても仕方ない。獣医学部新設に慎重だった文科省に対し、特区担当の内閣府が「総理のご意向」や「官邸の最高レベルが言っていること」を盾に「早期開学」を迫ったとする文書を民進党が入手。追及を強めると、文科省は省内調査を実施すると発表した。

 ところが高等教育局長や大臣官房審議官ら7人から聞き取りを行い、担当部局の共有フォルダーをチェックするなど1日足らずの調査で「存在を確認できなかった」と早々に結論を出した。個人のパソコンは調べていなかった。このとき松野文科相は「行政文書としては存在していない。個人の文書としても確認されなかった」と説明した。

 行政文書は公文書管理法などで保存・公開が義務付けられ、職員が職務上作成し組織的に用いると定義される。このため公式文書なら共有フォルダーに保存されているはずで、メモを含む個人の文書は法の対象外だから個人のパソコンまで調べる必要はないとの理屈で押し通そうとした。

 前川氏は昨年秋に担当の専門教育課から説明を受けた際に見せられたと述べており、次官への説明に用いられたのだから立派な行政文書といえるが、菅官房長官も「怪文書」と決めつけた。さらに天下り問題で辞任した前川氏への個人攻撃を展開。その後、さまざまな文書やメール、証言が出てきても、文科相とともに「出所不明なものは調査しない」と繰り返した。

 森友学園問題でも、財務省が省内規則に基づき国有地売買を巡る学園側との面会・交渉記録を廃棄したとし、それを盾に詳しい説明を拒み続けた。役所が不都合な事実を隠し、ひたすら「問題ない」と言い募るありさまに国民の不信は深まっている。政府はそれを肝に銘じるべきだ。

2017年6月12日 無断転載禁止