レッツ連歌スペシャル(要木木純)・6月29日付

(挿絵・麦倉うさぎ)
 インターネットは、知識を手軽に得られて、本当に便利ですね。いいかげんな情報には気を付けなくてはなりませんが。もっぱら、受け身で利用しておりますが、ネットの世界では、不特定の人と匿名で会話をする、チャットなどを積極的に楽しんでいる人も多いようです。実は私はこれが苦手。昔、ちょっとやってみた時は、見知らぬ人や外国人とやりとりをしたり、面白いことは面白かったのですが、何となく気持ち悪くなってやめてしまいました。

 名前も知らずに友達となる

という前句は、現代のネット社会を意識したもの。

いつ見てもブログの主の良いセンス

               (松江)西坂 瑞人

 でも、名前を聞かぬままに、知り合いになることは、ネットのない昔からありましたね。たとえば、酒場とか。

居酒屋のいつもの椅子に座る人 (飯南)塩田美代子

酒こぼし喧嘩(けんか)したのがきっかけで(益田)石川アキオ

誰とでも熱く語れるカープ女子 (松江)佐々木滋子

 旅先でも、隣の人と会話が弾むことがある。最後には、名前を教えあって、長いつきあいになることもあるでしょう。

バスツアーそろそろ終わりに近づいて

               (益田)竹内 良子

汽車の中一個のチョコから始まって

               (出雲)飯塚猫の子

三江線見納めの景色惜しみつつ (益田)可部 章二

バタ電で隣の席にロシア人   (松江)河本 幹子

まあ飲めと旅は道連れ隠岐汽船

            (埼玉・所沢)栗田  枝

被災地で汗水流すボランティア (浜田)勝田  艶

乗り鉄に撮り鉄録(と)り鉄入り乱れ (益田)大居 鴻平

酒を酌み山小屋で待つ初日の出 (出雲)石飛 富夫

 ただ、インターネットの場合と同様に、お互いに名乗らない交流は、何かうさん臭くて、危険なにおいがしますね。気をつけましょう。

スナックで言い訳電話たのまれて(松江)澄川 克治

帰り際〇〇党をよろしくと  (奥出雲)松田多美子

寸借の常習者とはつゆ知らず

           (広島・北広島)堀田 卓爾

交番の手配写真を見て震え   (雲南)錦織 博子

気を付けろ証拠残さぬ甘い罠(わな)(出雲)はなやのおきな

恥ずかしい店でちょこちょこ会いまして

               (安来)根来 正幸

塀の中犯した罪を語り合い   (江津)野坂 和子

 お年寄りの交流となると、名前のことなど超越した楽しさがあるらしい。

お互いに認知症とはつゆ知らず (安来)池田 陽子

杖(つえ)突いて耳が遠くて笑うだけ  (浜田)滝本 洋子

あめ玉を三袋持ってデイに行く

             (隠岐の島)浅垣 多世

年寄りはネット遊びに背を向けて(益田)石田 三章

 浅垣さんの「デイ」は、デイサービス(日帰り介護サービス)のことですね。

 子供同士の遊びは、大人になってからの複雑な人間関係と違って、何も考えないで友達になれる。見ていると、懐かしくうらやましい気持ちが起こります。

覚えてもすぐに忘れるお年頃  (出雲)吾郷 寿海

どこからかモノをもらってくる息子

               (浜田)放ヒサユキ

保育園我を忘れて泥あそび   (松江)庄司  豊

 理屈を考えると、何かがおかしい、突飛な発想の、以下の付け句も、印象に残りました。

代返をしとけと無茶を言うあいつ

               (松江)山崎まるむ

メダカたち誰が生徒か先生か  (江津)井原 芳政

ロミオああ貴方(あなた)はなぜにロミオなの

               (美郷)源  瞳子

ここまで来た個人情報保護時代 (松江)本田  章

UFOを降りたとたんに目が合って

               (益田)吉川 洋子

 人間同士の関係って、自分のことを知ってもらいたい一方、自分のすべてを相手にさらけ出すのは嫌というような、ややこしいところに成り立つもの。このややこしさゆえのおかしさ、不思議さを、皆さんよく表現されていると思います。

(島根大学法文学部教授)

2017年6月29日 無断転載禁止

こども新聞