アキのKEIルポ 臨機応変で最大の成果 理想通りならずも我慢

 錦織の食の嗜好(しこう)は、なかなか渋くて通好みだ。2014年全米オープン準優勝後の帰国会見で「ノドグロが食べたい」と言ったのは有名な話。ただ実はこれには前段階がある。帰国直後の錦織は、本当はアユが食べたいと思っていた。しかし季節は、既に晩夏。残念ながらアユの旬は過ぎた。そこで出てきた第2候補が、ノドグロだったという訳だ。

 例年、ウィンブルドンでは会場近くに家を借りる錦織は、試合前などにおにぎりを好んで食べる。定番は、シンプルかつ最も食材のうまみが味わえる塩むすび。ここでもやはり、彼の舌は通好みだ。

 ただ海外遠征で日本食などがない時に、文句を言わずある物を食べるのが錦織だというのも、よく聞く話。理想を掲げつつも、その時々で臨機応変に対応する…そんな彼の姿勢は、プレースタイルや信念とも通底する。

 2回戦のスタホフスキーはスライスを多用する、錦織としてはやりにくい相手。ラリーを組み立て、崩す理想のテニスは望めない。

 それでも相手のスライスに時に付き合い、時にラリー戦は諦めつつ、我慢のテニスで勝機をつかんだ。理想はいったん脇に起き、置かれた状況で得られる最大の成果をつかみ取る。この大会では恐らく、そんな戦いが続いていく。

 (フリーライター・内田暁)

2017年7月7日 無断転載禁止