医療現場の単回使用機材/安全第一に再利用検討を

 島根大副学長 大平明弘

 厚生労働省が、医療現場で単回使用機材(SUD)の再製造を進めようとしています。米国では1個数十万円するSUDを回収して、再販売するシステムがあり、日本でも取り入れるためです。

 企業が乗り気というのはビジネスとして成り立つからで、日本の医療費が高騰している中、削減することは極めて懐疑的です。私は厚労省に尋ねましたが、非公式にはよく理解しています。

 第一にSUDを複数回使用しても安全か、という問題と、第二に医療費削減に結びつくかという二つが大きなポイントです。

 単回使用器材とは「1回の使用後、廃棄する」のを意図して製造された器材です。製品の中には、手術で使うピンセットや、鉗子(かんし)のような手術後に洗って滅菌して、また使う器材に似通った製品も多数あります。

 「1回で捨てろ」との指示は、実は厚労省が言っているのではなく、メーカーが勝手に決めています。1回で捨てるなら、耐久性もそれほどいらないだろうということで、認可が受けやすいと思います。どんどん使って、どんどん捨てれば、どんどん売れてメーカーはもうかるでしょう。

 しかし、1回使えば壊れるような代物を手術に使えば、いつ壊れるか分かりません。当然、1回以上使える性能が必要で、メーカーも心得ているはずです。1回で捨てなければならない理由を明確にすべきですが、いまだに根拠を示されたことはありません。

 SUDを1回で捨てても複数回使っても、事故が起こる件数に差がないことを米国の会計院が結論付けています。米国では国立大学病院42校のうち、6、7割で何らかのSUDが再使用されています。

 米国での事例が物語るように問題はありません。むしろ、医療費削減に貢献していますが、メーカーは患者の安全確保という倫理的な面を訴え、1回にすべきと主張しています。これこそ資源の無駄遣いではないでしょうか。

 米国での試算で、200床規模の病院で再処理器材で賄えば、年間60万ドルから100万ドル(6600万円~1・11億円)の削減となり、廃棄物の削減は5000ポンド~15000ポンド削減できるといいます。医療品廃棄には通常のごみ処理に比べ、6~10倍の費用がかかります。全米の病院がSUDを再使用すれば、年間5億4000万ドル(600億円)の削減が可能です。

 SUDがきれいに洗われているかどうかを調べるため、器材の残留タンパク質を測定したところ、結果は問題なく、充分な洗浄だったことが示されています。

 国際病院機能評価機構(JCI)に認証されている日本国内の病院では、SUD審査には一つの病院も合格していませんでした。ところが2013年、済生会熊本病院がSUDの残留タンパク質を基準に、院内基準を策定し、JCIから認証されました。複数回使用中に機能低下があれば、当然、破棄することでSUDの安全性は担保されると考えます。

 島根大医学部付属病院の医療費購入総額は15年度、約16億円です。このうちSUDの購入額は3・7億円に相当し、1回で捨てられ、大量の医療廃棄物となっています。国内で無駄な費用が発生すれば、結局は国民が負担する税金で賄われることになります。

 患者の安全を第一に考慮し、SUDの取り扱いをどうすべきか、厚労省はもとより、産業界、医療の三位一体となる大改革が必要ではないでしょうか。

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 おおひら・あきひろ 熊本県出身。福岡大大学院修了。1998年、島根医科大眼科教授に就任。2000年から同付属病院材料部長兼任。15年から島根大副学長兼務。全国国立大医学部材料部長会議会長。

2017年7月16日 無断転載禁止