夏は虫捕り

 各地で相次ぐヒアリ発見の報に戦々恐々としている人もいるだろう。浜田ではセアカゴケグモが見つかった。マダニが媒介する病気も話題になる。恐れた親がこの夏、子どもに虫捕り禁止令を出すかもしれないと思ったが、昆虫少年は絶滅危惧種だろうから、そんな心配は無用か▼子どものころ、夏休みの長い一日にやることといったら、海水浴とともに、虫捕りだった。捕虫網を手にトンボやバッタを追った。夜は街灯に集まるカブトムシ。多くの男子がそうだった▼「虫を真に愛する人種は日本人と古代ギリシャ人だけである」と言ったのは小泉八雲だが、今は「虫離れ」だ。表紙の昆虫写真が人気だった学習帳は教員や親の「気持ち悪い」の声を受けて掲載をやめてしまった▼そこにやって来たヒアリやセアカゴケグモだけに、過剰反応にならないかと気になる。虫捕り経験があれば、冷静に対処できる。気持ち悪い生き物に出くわしたり、痛い思いをしたりしているはずだから▼「ファーブル昆虫記」を完訳したフランス文学者で昆虫好きの奥本大三郎さんは、自然の不思議さに目を見開く感覚「センス・オブ・ワンダー」の大切さを説く。そういえば十数年前、わが子との夜の昆虫採集で、長い土中生活を終えて木を登るセミの幼虫を見た。子ども時代に経験できなかった劇的な場面だった▼売り場でカブトムシを買うのもいいし、スマホを持って実体のない怪物を追うのも楽しいだろうが、この夏は親子で本物の体験を求めてはどうだろうか。(輔)

2017年8月3日 無断転載禁止