世事抄録 ある覆面メッセージ

 数年前の8月6日、新聞各紙のテレビ欄で中国放送が「カープ応援できる平和に感謝」と覆面メッセージを発し、ネットでも話題になった。番組内容の説明文そのものではなく、行の先頭の文字を縦読みすると“秘めた言葉”が浮かび上がる仕掛け。広島原爆の日にふさわしい趣向として、今も印象に残っている。

 しかし、そんな共感をぶち壊す「核」容認の動きが今年は内外であらわになった。最も恥ずかしかったのは3月28日に国連本部で起きたある事件。唯一の被爆国を表看板にする日本が、核兵器禁止条約の制定を目指す会議に不参加を表明したことから、空席となった日本代表の机の上に誰かが折り鶴を置いた。紙に書かれたメッセージはこうだ。

 「wish you were here(あなたがここにいてくれたら)」

 近年、原爆の日に合わせて核保有推進派が平和公園近くで「ヒロシマを疑う」といった集会を開く異様な状況が生じており、既に世界は軍事色復活の日本を疑い始めている。折り鶴は平和と核廃絶の象徴だが、昨年5月には広島を訪れたオバマ前大統領もわざわざ自作の4羽を原爆資料館に寄贈した。その意味は明白だろう。

 平和国家の劣化はどこまで進むのか、いずれ覆面メッセージしか使えない社会が到来するのかどうか。この夏が分岐点になる。

(松江市・風来)

2017年8月3日 無断転載禁止