「将の将たる」立ち居振る舞い

 古代中国、前漢の初代皇帝となった劉邦が、謀反の疑いで捕縛した韓信に聞いた。「自分はどれだけの兵が動かせると思うか」。韓信は劉邦配下の大将軍で、漢王朝誕生の立役者▼韓信は答えた。「陛下は10万までなら動かせるでしょう」。「お前はどれだけ動かせるか」「私は多ければ多いほど良く動かせます」。劉邦は笑って聞いた。「ではなぜお前は私の捕虜になっているのか」▼「自分は兵の将たる者。あなたは将の将たる人だったからです」。互いに天下取りをうかがうライバルだったが、いくら戦上手でも自分は一将軍のまま。皇帝に上り詰めた劉邦には群雄を束ねる天授の力量があったから、という答えだ▼第3次安倍内閣の第3次内閣改造と党役員人事が終わった。鍵となる閣僚の顔触れは、無難さを意識したのか守りの印象。党人事では、竹下亘氏(衆院島根2区)が総務会長に就任し、党内融和の重責を背負うことになる▼盤石に見えた「安倍1強」を支えた内閣支持率が急落し、今回の改造は政権の再浮揚を占う意味を持つ。お騒がせ閣僚を一掃した表紙替えだけであってはならないし、「人づくり革命」を目指すというなら、まず首相の手腕に注文を付けたくなる▼省の将たるは大臣。その采配に口出しし、身内に甘い政治などとう批判を浴びてはならないのはもちろん、少々扱いにくくても、歯に衣(きぬ)着せぬ物言いをする直言居士を大切にするべきでは。「将の将たる」首相には、天命を自覚した立ち居振る舞いがあるはずだ。(裕)

2017年8月4日 無断転載禁止